【ヤマヒロのぴかッと金曜日】言葉を生業にする者として 高市発言で気になるアレやコレや

 「働いて、働いて、働いて、働いて…」。あれっ、何回言うのが正解だったかな?

 高市総理が自民党総裁選に勝利したときに口にしたこの言葉は「働き方改革」や「ワーク・ライフバランス」に逆行するとバッシングされ、今も賛否両論のなかにあるが、今年の新語・流行語大賞に選ばれた。

 私は、現状の間違った「働き方改革」をいつもあきれて見ていたので、新しい日本のリーダーがこう言ったことを歓迎している。無論、反対意見もあるだろうが、「言葉」が心に響くのは、その言葉の持つ意味や心が多くの人の胸を打つからに他ならず、それが受賞につながったのだろう。

 総理の台湾有事を念頭に置いた「存立危機事態」についての国会答弁も同じ。あれは、外交安全保障上当たり前のことを言ったまでで、ぎゃあぎゃあ騒ぐ方が間違っている。騒いでるのは中国と野党とメディアだけじゃないだろうか。何もおかしな事は言ってない。

 ただし、威勢の良さが際立つ弁舌をしていても、ひとつ間違うと取り返しのつかない失言につながってしまうこともある。それが、先の国会における党首討論での高市氏の発言だ。企業団体献金の廃止を議論する中で「そんなことより議員定数削減を」と言った。あれはその場しのぎの、明らかな失言である。

 一般的な会話の中でも、この言葉は、相手の気をそらせて話の内容を断ち切ってしまいたいときに使う、極めてズルい表現方法である。国民の関心を集める企業団体献金の廃止を「そんなこと」と言ってしまったのだ。むしろ、なぜこの失言に野党の政治家たちはその場ですぐ反応できなかったのであろう。

 討論が終わってしまってから「あの発言はけしからん」とインタビューやXで批判するくらいなら、発言した瞬間になぜやり込めなかったのか。これでは批判の矛先も鈍るというものである。高市氏も「企業団体献金廃止問題」を軽んじる気持ちは無いと思うが、しばらくは委員会で余計な時間を費やすことになった。

 いずれにせよ、言葉というものは口にした途端ひとり歩きしてしまうものでもある。

 これまでもテレビなどで高市氏の発言を聞いていて、時に「勢いそのまま」に発言する危険性をはらんだ人だなぁと思って見ていた。これは気性の強い人間の常で、守勢に立ったとき感情を隠せずついポロッとやってしまう。

 井戸端会議でも、議論に負けたくない時や優位に立ちたい時、人は同様のことをやってしまいがちである。例えば「~って言うより」。これは、前に話した人より私の意見の方が的を射た発言だという気持ちが言外に表れている。

 あるいは「もっと言うと…」。潜在意識として他者よりマウントを取りたいときに使いがちな言葉だ。何気に使っている人がいかに多いことか。スマートな人は、酒席でもこうした言葉は使わない。街場の議論なら品格を下げる程度で済むのだろうが、こと国政の場で総理大臣が口にすると直ちに大ごとになる危険性をはらむ。先の発言はそのあしき例だった。

 「そんなことより」議論すべき問題は山ほどある。追い詰められたときに、土俵に足をかけてでもあきらめず、じっくり構えて発言することが肝要では無いだろうか。「ついポロッと」も、計算して言えるようにならないと。(元関西テレビアナウンサー)

 ◆山本浩之(やまもと・ひろゆき)1962年3月16日生まれ。大阪府出身。龍谷大学法学部卒業後、関西テレビにアナウンサーとして入社。スポーツ、情報、報道番組など幅広く活躍するが、2013年に退社。その後はフリーとなり、24年4月からMBSラジオで「ヤマヒロのぴかッとモーニング」(月~金曜日・8~10時)などを担当する。趣味は家庭菜園、ギターなど。

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