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大橋未歩アナが語るパラ五輪の魅力 パラ卓球では障害部分を狙うのが相手への敬意

 「かわいそうでどう観たらいいか分からない」。パラリンピックの話をすると、申し訳なさそうに言われることがある。

 オリンピックキャスターを終えた約半年後に脳梗塞になり、たまたま後遺症が残らなかった私は、今度はパラリンピックを伝えてみたいと漠然と考えていた。でも「かわいそうでどう観たらいいか分からない」という声に対する明快な答えは持っていなかった。

 進行性の病を抱えたある選手が、それは『優しい差別』なんだと教えてくれた。社会は障害を持つ人を気遣ったつもりで、いつのまにか「かわいそう」の箱に閉じ込めてしまう。それを彼女は『優しい差別』と表現した。パラリンピックを伝える以上、この壁は避けて通れない気がして悶々とする。しかし心の澱(おり)は、ある取材で出会ったこの言葉によってろ過された。

 「勝つために、相手の障害を徹底的に狙うんです」

 パラ卓球日本代表のエース岩渕幸洋選手の言葉だ。岩渕選手は、左足首を自分の力で動かせない。張りのある太ももから、ふくらはぎにかけて急に細くなった左足には器具が装着されている。卓球のトップ選手のラリーは時速160キロほどに到達するといわれる。フォアハンドで打った後に返球がバックハンド側に来た時、右から左への素早い体重移動が必要となるが、岩渕選手の場合は障害のある左足で踏ん張りづらい。だから相手選手からは左サイドを狙われる。

 「パラ卓球は相手の障害を徹底的につくのがセオリー。それを前提として乗り越えていく戦術が醍醐味(だいごみ)です。だから試合会場に入って、まず相手選手の障害をお互い観察するんですよ」

 障害部分を狙うというのは相手選手へのリスペクトでもあり、その上で戦略を立てるのがパラ卓球選手の矜持(きょうじ)だと言う。

 障害は「気遣ったり」「見て見ぬふり」をするものではなく「戦術」の1つなんだ。「フェア」という言葉が輪郭を持って胸に迫ってくる。勝利への生々しい執念が心を躍らせる。視界が開けていく感覚がした。

 ◆大橋未歩(おおはし・みほ)1978年8月15日、神戸市出身。フリーアナウンサー。2002年入社のテレビ東京時代にアテネ、北京、ロンドン五輪を取材。18年にパラ卓球アンバサダー就任。19年から「東京2020パラリンピックの成功とバリアフリー推進に向けた懇談会」メンバー、パラ応援大使でも活躍。

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