【平成物語6】すさまじかったヨン様ファンの“熱”と“圧”

 【平成16(2004)年ヨン様フィーバー】

 04年4月、NHKで韓国ドラマ「冬のソナタ」が放送されたことに始まる“ヨン様フィーバー”。主人公の韓流スター、ペ・ヨンジュンの取材現場に何度となく訪れたはずなのだが、記憶に残っているのは、ヨン様本人ではなく、女性ファンのすさまじい“熱”と“圧”だ。

 同年4月3日の初来日では、羽田空港に5000人ものファンが集結。半年後の11月25日に2度目の来日を果たしたときにも、成田空港に徹夜組100人を含む5000人が押し寄せた。

 ファンたちはヨン様が到着する前から、整然と並び、着席していた。ヨン様に迷惑をかけないためのマナーだ。突然、歓声が起こり、姿を見せた男性に手を振る。男性も笑顔で応じる。あれ?ヨン様ってあんな顔だっけ。戸惑う記者に、女性ファンは「何言ってるの。○○室長よ。広報室のトップ!」。ヨン様の側近すらスターになっていた。

 翌日、フィーバーの過熱ぶりを象徴する事故が起きてしまう。ヨン様が宿泊しているホテルで、出待ちをしていたファン10人が、将棋倒しになり、けがをしてしまったのだ。

 事故が起きた時間、記者はすでに会見が行われる予定だった六本木のホテルで、本人の到着を待っていた。会見場は約350人の記者でごった返していた。予定時間から大幅に遅れて登場した“ほほえみの貴公子”は、目に涙をため、眉間にしわを寄せていた。

 その顔を見た記者席から声が飛んだ。「泣かないで!」「頑張って!ヨンジュンシ~(ヨンジュンさ~ん)」。記者が会見中に励ましの呼びかけをするなんて、異常な光景だった。声のした方向を見ると、数人の女性が両手を拝むようにして、ヨン様を心配そうに見つめていた。思えば、普段の芸能人の会見では見たことがない“記者”ばかりだった。彼女たちが受付で、即席にしか見えない名刺を差し出していたことを思い出した。

 ヨン様ファンの行動力には驚くばかりだった。話を聞いたほとんどの女性が、冬ソナのロケ地を訪ねていた。事故の翌日、六本木で行われた写真展の取材をしたときに出会った女性は、名古屋から、なぜか大量のヨン様グッズを大きなビニール袋に詰め、はせ参じていた。「買ったグッズで一番高いものは?」と聞くと、1枚の写真を見せてくれた。そこには、ヨン様が当時、CM出演していた自動車が写っていた。(デイリースポーツ・杉村峰達)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

芸能最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(芸能)

    話題の写真ランキング

    デイリーおすすめアイテム

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス