【羽生・藤井公式戦初対局】(1)藤井五段伝説第2章…師匠も驚く進化

 永世七冠の称号を手にした羽生善治竜王と最年少棋士・藤井聡太五段が17日、朝日杯将棋オープン戦準決勝(東京・有楽町朝日ホール)で公式戦初対局する。棋界の記録を数々打ち立ててきた第一人者と、その記録を塗り替えてきた若武者。将棋界の未来を占う一局を4回の集中連載で追う。

 藤井五段の勢いが止まらない。昨年7月、歴代最多連勝記録が29でストップしたが、今年に入ってからも佐藤天彦名人(30)を破り、史上初めて中学生で五段昇段を果たすなど、伝説第2章は始まっている。

 師匠・杉本昌隆七段(49)も才気あふれる弟子の“進化”に舌を巻いている。

 「年齢的に強くならないわけがないが、どのように強くなるかは想像が付かなかった。得意の終盤力を磨いていくかと思っていたが、ウイークポイントだった序盤中盤のミスをなくして精度を高めるという感じの成長を感じる。これは予想外でした」

 その上で「年齢による人間的成長もあるのか、将棋が柔軟になった」と分析し、「ハイリスクハイリターンの差し回しから、一歩引いて相手に手を渡したり、より正確に勝ちきれるようになったと思う。流れを自分に引き寄せるのが非常にうまくなった。はた目には苦しい展開でも、わずか数手で入れ替えている」と評価する。

 羽生竜王について、藤井五段は昨年、28連勝を達成し、最多連勝記録に並んだ際に「目標にしている棋士」と語った。それでも将棋盤を間にすれば、あこがれも宿敵に変わる。

 杉本七段も「将棋が始まれば勝負なので、よそ行きの将棋は指さないでもらいたいと思います。今までそういうのを見たことないので心配はしていないんですけど」と笑い、「大きい一番ということで雰囲気に飲まれないようにと思います」とエールを送った。

 これまで羽生竜王と藤井五段は非公式戦で2回対局して1勝1敗という戦績。師匠は「初対戦ではないことはおそらく(藤井五段に)プラス材料だと思います」と経験が味方すると踏む。

 藤井五段は年度成績でも勝率など4部門で首位に立つ。「純粋に将棋が強くなりたいという気持ちが誰よりも強い」と杉本七段。「五段には順調に昇段した。もし六段に昇段するなら(=朝日杯で優勝するなら)、29連勝に匹敵する価値だと思います」とまな弟子の飛躍に驚きを隠さない。

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