伊調馨3年ぶり13度目V…残り10秒で大逆転 世界選手権代表に王手

 「レスリング・全日本選手権」(23日、駒沢体育館)

 女子57キロ級決勝が行われ、五輪4連覇の伊調馨(34)=ALSOK=が、リオデジャネイロ五輪63キロ級金メダルの川井梨紗子(24)=ジャパンビバレッジ=に3-2で逆転勝ちし、3年ぶり13度目の優勝を果たした。来年6月の全日本選抜選手権も優勝すれば世界選手権代表となり、同大会でメダルを獲得すれば東京五輪代表も決まる。前人未到の5連覇に向けた道を自らの手で切り開いた。男子フリースタイル65キロ級は世界王者の乙黒拓斗(山梨学院大)が初優勝し、男子グレコローマンスタイル60キロ級は昨年の世界選手権59キロ級覇者の文田健一郎が2度目の優勝。リオ五輪金メダルで68キロ級の土性沙羅(東新住建)は、旧階級を含めて8連覇を成し遂げた。

 これが伊調だ。これが五輪4連覇の底力だ-。失っていた闘争心を取り戻したかのように執念で逆転勝ちした34歳は「東京五輪は全く見えていなかったが、上を見たらあるのかなと思えた試合だった。まだぼやけてはいるけど、しっかり見えるように来年計画を立ててやっていきたい」。慎重な性格の女王が、前人未到の5連覇への青写真をしっかりと描き出した。

 初戦で敗れた時と同じような展開で1-2とリードを許したまま残り15秒を切ったところで、鬼の形相で相手右足への片足タックルに入った。「ラスト何秒かもわかってなかったし、(足を)キャッチすることだけ考えた。どうやって取ったかも覚えていない」。テイクダウンを奪い3-2と逆転したのは残り10秒。試合終了ブザーを聞くと、よっしゃーと両手を握りしめた。

 以前は優勝しても喜びを表すことは少なく「満足しているみたい」と控えていたガッツポーズも珍しく飛び出た。国内では敵なしだったリオ五輪前とは違い、ブランクも不安もある中で現役最強女王への雪辱V。「それらが重なって気持ちが上がりました」と恥ずかしそうに振り返った。

 執念の逆転勝ちに観客席の姉・千春さんは号泣していた。伊調からは1週間前に「勝つよ」と連絡が来たというが、「そんなことは初めて」と千春さん。悩み抜いた末に復帰し、五輪挑戦へ腹をくくった大一番だっただけに「それくらい今までと違った思いがあったから勝てたんだと思う」とおもんばかった。

 復活までは険しい道のりだった。3月にはパワハラ問題が顕在化し、人目を避けるようにホテル住まいを余儀なくされた時期もある。引退と復帰で毎日気持ちは揺れ動いた。所属では広報部で社業に専念していた時期もあったが、「OLに向いてない。好きなことはレスリングしかない」と今春から日体大を拠点に練習を再開した。マットから離れている間にやせ細り体重は一時期53キロまで落ちたが、急ピッチで戦える状態まで仕上げた。

 10月に実戦復帰した際には失っていた試合勘も土壇場の大一番で取り戻した。田南部力コーチは「ほぼ復帰戦で今の最強王者に勝てたのでよかった。来年6月にはもっといいレスリングができる」と太鼓判。伊調も「1戦1戦戦う中で少しずつ自分のレスリングが戻ってきた。感覚を戻した上で進化していきたい」と完全復活への手応えを口にした

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