体操・宮川の主張はどう認定された?引き抜きはなし、塚原夫妻に「不適切」指摘も

 今年の8月にリオ五輪体操女子日本代表の宮川紗江が、日本体操協会の塚原光男副会長、千恵子女子強化本部長のパワハラを告発したことをきっかけに進められていた第三者委員会による調査が、不適切な点が多々あったとはいえ「『パワーハラスメント』があったとまでは断定することはできない」と結論づけられた。では、何が不適切で、宮川側による数々の主張はどう認定されたのか。主立った項目ごとにまとめる。

(主張1)速見佑斗コーチからの引き離しや、朝日生命体操クラブへの引き抜きがあった

 第三者委は「引き離し行為は認められない」と結論づけた。今年の7月15日に塚原夫妻が宮川と面談するよりも前に、速見コーチの暴力行為について複数の目撃情報を得ていたことが理由とした。ただし、千恵子本部長が自分ならもっとうまく教えられる、という主旨の発言をしたことなどにより、宮川に「引き抜き」の疑念を抱かせたとも指摘している。

(主張2)塚原夫妻による“2対1”の面談などによる圧力があった

 今年7月15日に、速見コーチの暴力行為についての聴き取りとして、合宿中に塚原夫妻による面談が行われた。宮川は8月の会見で「すごく怖かったし、このままつぶされてしまうのかと思った」などと振り返った。第三者委はこの面談が合宿中のナショナルトレーニングセンターで行われたことについて「場所については問題ない」。塚原夫妻との2対1で行われたことは「問題がないとはいえない」、「保護者を立ち会わせて行うべきであろう」など指摘している。

 ただ、千恵子本部長が、夫である光男副会長に立ち合いを求めたことは「配慮が足りない点はあるにしても、悪性度の高い行為であったとまで評価することはできない」と、第三者委はシロかクロか、といった見地では判断していない。

(主張3)「宗教みたい」「五輪に出られなくなる」などの千恵子本部長の発言があった

 速見コーチを信頼する宮川の家族を指して「宗教みたい」と発言したことは、第三者委は「極めて軽率で不適切」とした。五輪に出られなくなる、という主旨の発言は宮川の成績面を年頭においていたとはいえ宮川に「不安を覚えさせるものであったと考えられ」とし、適切ではなかったとした。

 しかし、「ところどころ不適切な言葉が含まれている」と塚原夫妻の発言について認定しながらも「悪性度の高い決定的な問題があるとすることもできない」とした。その上で、夫妻の態度は「終始高圧的」で、パワハラと「感じさせてしまっても仕方がないもの」としつつも、速見コーチの暴力行為について千恵子本部長が情報を得ていたことに注目。「宮川選手の成長にとって速見コーチの存在はマイナスであるという思いを元々持っていたこと」などを理由に夫妻に「決定的な問題があるとまで断定することはできない」とした。

 主立ったものだけを項目ごとにまとめたが、いずれも塚原夫妻側に落ち度があったとはいえ、パワハラとまでは言えない、という“程度問題”の見地からパワハラ認定をしなかったことがうかがえる。

 第三者委員会は改善案として、体操協会に外部の有識者を理事に迎えることや、強化本部長の権限を明文化し過度に強大化しないようにすること、国際大会の選考過程を透明化することなどを提示している。また、協会と選手・指導者側のコミュニケーションを図る場をつくるべきともしている。

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