愛媛・弓削商船高専 豪雨の影響で1週間ぶりにチーム集結も監督不在 敗戦に悔いなし

 「高校野球愛媛大会・1回戦、宇和島南8-2弓削商船高専」(14日、松山中央公園野球場)

 夏の初戦、弓削商船高専のベンチに監督の姿はなかった。

 学校がある愛媛県上島町の離島・弓削島は、西日本豪雨の被害で断水が続いている。チームを率いる森瑛太郎監督はこの日、同校生徒が実習などで使用する練習船「弓削丸」に乗り、重要な任務を背負って航海に出ていた。

 「水をもらうために船で広島に行きました。監督は弓削丸の船長補佐で、今回はどうしても外せない公務です。住民のみなさんも困っていますから」。この日、急きょ指揮を執った福田英次部長(37)はそう説明した。

 被災から1週間。断水が長引き、住民はトイレや洗濯に使う生活用水がなくて不便を強いられている。風呂にも長く入れていない。復旧のメドが立たない中、同じ高専校の広島商船高専から水を提供してもらえることになった。「いただいた水は住民のみなさんに使ってもらいます」と同部長。その水を運ぶために、監督は舟に乗った。

 豪雨の影響で、弓削商船高専ナインは12日の開会式にも出られなかった。同校には“船乗り”を目指して全国各地から生徒が集まっており、野球部員も寮で生活する県外出身者がほとんどだ。断水で学校は臨時休校となり、寮生は実家に戻って復旧を待つことになった。そのため開会式を欠席。各地に散らばっていたナインはこの日、坊っちゃんスタジアム(松山市)で1週間ぶりに集結した。

 監督不在で臨んだ試合は三回、2死二、三塁から1番・苅田響内野手(3年)がスクイズを決めて先制すると、続く2番・阿部航大内野手(3年)が左越え適時二塁打を放って2点を先行した。しかし、四回にエース・稲本有我投手(3年)が3点を失って逆転を許し、六回から登板した2番手・苅田も相手打線の勢いを止められず2-8で敗れた。

 大会直前の1週間、チームは全体練習ができなかった。それでも主将の菅沢瑛二外野手(3年)は「力を出し切れた」と言い切る。前夜、森監督から電話で「お前がしっかりチームをサポートしろ」と言われた。

 「このチームは野球を楽しむことをテーマにやってきた。監督もいなくて負けてしまったけど、みんなで野球を楽しめました」

 それぞれが果たすべき役割を全うした夏の一日。同主将は「悔いはありません」と胸を張った。

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