フジ亀山社長 イライラ発言の真意とは

 フジテレビの亀山千広社長が4月24日に出席した定例会見での発言が、批判されている。

 大幅改編したにもかかわらず、4月クールも視聴率が苦戦していることに「イライラしている。この状態の一番の原因を作ったのはドラマ。他の新番組の後押しができなかった」と原因を分析。特に実験的な作品とされる土曜深夜「She」を「大いに実験してもいいが、ただの実験で終わると評価にならない。独りよがりの実験にならないように。結果を視聴率で計られる」と指摘した上で「ドラマの諸君はまだまだ間に合うので、どう面白く作るか、考えてほしい」と叱咤(しった)激励した。

 これらの発言に対し、ネット上で「的外れ」「ドラマに押しつけている。バラエティーも視聴率が低い」などなど、集中砲火を浴びた。この亀山発言の真意を、同社の花形ドラマプロデューサーだった現役時代について書かれた1冊の本から読み解きたい。

 「踊る大捜査線」の脚本を担当した君塚良一氏が2001年に出版した「テレビ大捜査線」(講談社)。ドラマ史に残るヒットシリーズを生み出す君塚氏と亀山氏(本の中ではKプロデューサーとして登場)のやり取りがビビッドに描かれている。

 あまりにも大ヒットしたせいで、今となっては意外にも感じるが、1997年1月クールの火曜9時枠に放送された同作を立ち上げるにあたって、亀山氏は「まったく新しい刑事ドラマを作りましょう」と号令をかけ、「主人公に犯人を逮捕させない」など、さまざまな実験的な挑戦を仕掛けていた。

 その一つが「ラブストーリーの要素はなし」。主演を織田裕二、ヒロインを深津絵里が務め、2人が演じる青島とすみれは、いがみ合いながらも、息のあったコンビで次第にいい雰囲気に。最終話に向けて、2人の恋愛も盛り上がる…。実際に君塚氏も4話まではそのつもりで、伏線を張っていたが、亀山Pの「決めた!ラブラブなし!」という一言で、イッキに覆されたという。

 戸惑う君塚氏に、亀山氏は、同クールで始まった月9の恋愛ものドラマが高視聴率をあげたことを理由に「他のドラマで恋愛ものをやっても食い合うことになっちゃう」「違うドラマがあれば、月9と一緒にこっちも観てくれる」と路線変更を説明。君塚氏は「テレビ局は、一本一本のドラマで勝負しているわけではないのだ。その週に流れる数本のドラマを、トータルで全部見てもらうと考えている」と結論づけている。

 時を2015年に戻すと、今クールは月9「ようこそ、わが家へ」を始め、5本のドラマがあり、いずれも視聴率は苦戦している。しかし、97年当時の亀山P発言に照らしてみれば、修正次第で好転する可能性はまだまだある。どれか一作品が高視聴率をあげて、いいムードを作れば、他の作品、ひいては新番組に波及していく期待もある。亀山社長はそういう意味で発言したのではないだろうか。

 最後に、亀山社長の社長会見は他局の社長会見と比べて毎回、圧倒的に質問の数も多く、活気があり、そして、多くのニュースになっている。例えば、日本テレビの女性アナウンサーが「高度の清廉性」を問われて裁判になったときは「うちならそのまま入社させる」と言い放つなど、サービストークが満載だ。

 社長就任前の映画事業局長時代は、映画の製作発表会見や公開初日の舞台あいさつに「興行収入100億円狙います!」などと、トップ自ら率先して大風呂敷を広げ、記事が大きくなるように仕掛けてきた。

 そのノリは、フジテレビが視聴率三冠王だったころのイケイケなまま。そんな社長に率いられ、明るく元気なフジテレビ復活の日はいつか来るだろうか。

(デイリースポーツ・杉村峰達)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

オピニオンD最新ニュース

もっとみる

    ランキング

    主要ニュース

    リアルタイムランキング

    写真

    話題の写真ランキング

    注目トピックス