デイリースポーツ評論家の山下智茂氏（７１）＝星稜総監督＝が高校野球の未来を考える企画の第７弾は、沖縄尚学のエースとして１９９９年センバツで沖縄勢悲願の甲子園初優勝を果たし、母校の監督として２００８年センバツ優勝を成し遂げた比嘉公也監督（３４）。近年の沖縄勢の躍進は「沖縄に足りなかったもの」を見つけて進化した柔軟性が鍵だった。

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　－ルーズな生活態度にはペナルティーが？

　比嘉公也監督（以下、比嘉）「練習中の草むしりとか。日常生活がしっかりできない子は必ず野球のプレーが雑になってエラーすると言われていた。指導者が見えないところで手を抜く同級生とかいますよね。そういう生徒がトンネルしたりアウトカウント間違えたり、明らかな飛球で飛び出したり、現役の時はそういうものだろうと思っていました。でも、県内も今はないと思います。どこもしっかりされている。僕らは学校の校庭で練習試合ができないので外へ出ていましたが、基本的に僕らが先に着くことが多かった。準備されていることはなく、だいぶ外で待つこともあった。でも、今はそんなことなく、全部準備されています」

　－おおらかさが沖縄のいい部分でも。

　比嘉「それが勝負ごと、厳しさの部分では弱さになって出ると常々言われていました」

　－優勝争いが現実的になったからか。

　比嘉「うちとか興南さんとか優勝するということは、練習試合でもう少しで勝てそうな相手が優勝するということ。練習だけじゃなくて、日常生活に目を向ければ何とか勝てるんじゃないかと考える学校が増えていると思います」

　山下智茂氏（以下、山下）「僕は昭和４８年に沖縄特別国体（日本返還を記念した国体）に来たんです。まだ生まれてないでしょう。（作新学院の）江川と一緒に来たんです。その時の天気が土砂降りだった。でも（当時の日本高野連の）佐伯会長が沖縄の人はみんな野球を楽しみにしているからって。雨の中でやったのがすごく記憶に残っているんですよ。その頃の沖縄はすごく弱かったけど、今の沖縄の強さは何かな？」

　比嘉「キャンプに来る球団が増えて球場に室内練習場も隣接されて、環境整備が比べものにならないくらい進んだこともあると思います」

　山下「本土から高校野球のキャンプとかで対外試合をガンガンやるのも」

　比嘉「大きいですね。僕らの現役時代はそういうのがなかったので。県外のチームが来ることはあったけどここまで大々的に数は多くなかった。今は非常に恵まれた環境です」

　－年中暖かいことも。

　比嘉「やろうと思えば気候的には年中ボールは握れます。ただ、そういうのをやらなくなったのも沖縄のレベルが上がった理由だと思います。メリハリをつけるというか、この時期は体力強化をするとか、どこの学校もいわゆる冬トレをきちっとやっているのも大事なことだと思います」

　山下「僕らは逆に雪国だから、勝つためにウエートトレとかプール走らせたりとか、人のやってないことをやらないと勝てないってやっていたね」

　比嘉「本当がどうかわからないけど、沖縄では１２月でも試合形式でやっていたと聞いたことはあります」

　山下「県全校の体力測定（毎年１月に行われる沖縄県高校野球部対抗競技大会）をやっているけど、効果はあるの」

　比嘉「結果的に効果があると言えばあります。総合得点の上位校が沖縄大会の上位に集まったりしますので。例外もありますが」

　山下「ライバル意識も出てくるね」

　比嘉「そういう意味では最近の生徒は数字で示さないとやる気が出ないので、いいのかなと思います」

　－冬トレは最近のこと？

　比嘉「僕の高校の恩師（金城監督＝現長崎日大監督）は県外で指導して沖縄に戻られた方なので、冬場の時期は投げない、打たないとトレーニング中心の練習をやっていた。当たり前と思っていたけど、他はそうじゃなかったらしい。でも、今は冬トレをきちっとしている。また県外との情報交換の中で食トレなんかにも手をつける学校も増えてきました」

　－オフにはつり輪のトレーニングなど工夫をこらしている。

　比嘉「不安定な中で（できるトレーニングは）何かないかなと思って。不安定なところで軸をしっかり維持しようとするので、（体の）中の部分が鍛えられる。定期的にやっていますが、今はバランスディスクの上に立ってやるのが増えている。どちらかと言うと自体重で鍛えるのが僕は好きです。僕らが高校生の時から手押し車は前に行くことしかやったことなく、僕もそれしかやらせてなかったけど、ある練習を見学すると前、後、横とやっていた。僕は自分がやってきたことだけをやらせていた。自分に頭の柔らかさが出てこないかなって思っています」（３に続く）