坂本龍一が仕事復帰 山田作品劇中音楽で

 中咽頭(いんとう)がんのため療養していた音楽家の坂本龍一(63)が、女優・吉永小百合(70)主演で山田洋次監督(83)がメガホンを取った映画「母と暮せば」(12月12日公開)の劇中音楽を手がけ、仕事復帰することが2日、分かった。坂本と親交のあった吉永が橋渡し役となり、山田監督との初タッグが実現。山田監督の「男はつらいよ」シリーズの大ファンという坂本は「この2人に何かを頼まれて断れる日本人がいるでしょうか」とユーモラスにコメントした。

 教授が帰ってくる。山田監督の通算83作目となる「母と暮せば」。13年春に企画が動き出したときから、山田監督は「主役は吉永小百合、音楽は坂本龍一、このお2人しか考えられない」と構想していたという。

 先に出演を決めていた吉永は、ライフワークの原爆詩の朗読会で坂本がピアノ伴奏を担当するなど親交があった。昨年4月、坂本のコンサートへ山田監督とともに訪れ、紹介。山田監督はその場でオファーし、坂本も「男はつらいよ」の大ファンだったこともあり快諾。名女優が日本を代表する音楽家と映画界の巨匠を結びつけた。

 映画は7月中旬に撮影を終え、秋の完成に向けて編集作業を進めている。音楽は坂本と山田監督が作品イメージを話し合い、これから作っていくという。

 坂本は昨年7月からがんのステージや治療方法などを公表しない方針で療養を続けてきた。今年5月29日に札幌市長を表敬訪問した際に約1年ぶりに公の場に登場。やや、やせた印象ながら笑顔を見せ「やっと体調が戻ってきた。天が与えた充電期間だと感じます」と話していた。

 反原発活動を続ける坂本は、今作が長崎の原爆投下後の物語であることから「核のない世界を望んでいるぼくとしては、やるしかありません。このような大作が、復帰第1弾の仕事なのですから、ぼくは本当に幸せ者です」とコメント。吉永も「舞い上がっています」と喜んでいる。

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