夏は必ずマウンドへ-前橋育英の元エース・吉沢 復帰の思い胸に校旗振り応援
「選抜高校野球・2回戦、報徳学園4-0前橋育英」(26日、甲子園球場)
立つはずだった場所。前橋育英・吉沢悠投手(3年)は三塁側アルプス席の最上段から、マウンドを見つめていた。「悔しかった。チームに迷惑をかけた」。昨秋の背番号1は、校旗を持つ係を志願して、仲間を応援した。
突然の悪夢は今月5日。紅白戦で右足首をひねった。じん帯の損傷。大会メンバーから外れることが決まると、人目もはばからず泣き崩れた。
折れそうな心を支えたのは周囲の言葉だ。地元に残っての練習中、主将の飯島からは「夏は絶対にお前を出してやる」と、LINEが来た。荒井監督からは足の具合を尋ねる電話があり「こういう経験をプラスに変えていこう」と励まされた。
1回戦は他の部員と一緒に応援。2回戦で旗持ちを買って出たのは理由があった。「試合をしっかり見ながら応援したかった。ここでしか感じられないものがある。何かを学んで、夏に生かしていけたらいい」。甲子園では自然と球が浮いてしまう投手の姿に、低めの制球力の大切さをあらためて心に刻んだ。
この日はともに汗を流してきた根岸が先発。ケガをしなければ、自分がその役を担っていたかもしれない。「復帰して、迷惑をかけた分を返したい。期待に応えるためにも、しっかり治したい」と誓った。背番号1を取り返し、最後の夏はあのマウンドに戻る。