2023.10.16

小田穂乃実の実になる話⑨「障害レース」ってな～に？

　みなさん、こんにちは！コースにある障害物を、スパッと格好良く跳びながら競走する「障害レース」。調教方法など平場レースとの異なる点や、成績を残すことができる馬の特徴とはどのようなものなのでしょうか？？イロゴトシとコンビを組み、４月の中山グランドＪでＧ１初制覇を果たした黒岩ジョッキーに詳しくお話を聞かせていただきました。

　「障害の中にも生垣、竹柵、水ごうなどいくつか種類があります。生垣は日常でもよく見かける樹木が並んだもの。竹柵は竹がたくさん突き刺さっているもので、人間がその上に落ちてしまうと少し痛いですね…。水ごうは生垣の奥に、水がたまっている堀がある障害のこと。それぞれ高さや幅も違っていて、難易度も異なります」

　ちなみに、よく見かける生垣は高さが大体１・４メートル、幅が１・４～２・４メートル前後だそうです。こんなに大きな障害をいくつも飛び越えるのですから、疲労は相当ですよね…。

　平場でのレースと、障害レースでは求められる能力はやはり異なるそう。「もともと平場で走っていた馬を障害レースに方向転換させていく、というのは決して簡単なことではありません。平場の時は、ゲートを切ってからいかに速く駆け抜けられるか、というところに重点を置いて調教されますからね。ただ、長距離をゆったり走っていた馬に向くんじゃないかって思う人は多いと思うんですが、障害もスピードがないと勝負にならない。そして、そのスピードを維持できるスタミナが必要ですね」。確かに、未勝利戦でも３０００メートル前後と、持続力を求められるレースになっています。

　そして、何よりも失敗から学べる「学習能力」が必要になってくるとか。飛越の際に、はっきりとした“失敗”を経験することが多々ある障害レース。経験するごとに、そこからしっかりと学んで次につなげていく、という能力が重要だそうです。

　調教はジョッキーが一頭一頭に寄り添って行われます。「馬にしたら初めて障害を見た時は怖い。何があるか分からないからね。時間をかけて反復しながら慣らしていきます。怖くてなかなか跳べない馬は、人や馬が誘導します。馬はもともと集団動物なので、前の馬が行ったら大丈夫なんだって安心するんです」。

　レースで跳ぶことができるようになるまで、何度も何度も繰り返し練習を重ねます。「最初は丸太をまたぐところから。そこをクリアすると、徐々に障害の高さを出していきます。土台があるものになっていって、少し大きくなると怖くなる馬もいますね。馬のタイプにもよるし、上に乗っている人の技術も大切です。センスのある馬は、ひょいひょいってレベルアップしていくことも」。

　障害レースは１度走ると影響はとても大きいようです。「１０回調教で走るよりも、１回レースを走る方が経験できることは多い。ただ、速いスピードで障害を跳ぶのでダメージも大きく、何度も走ることはできない。レースでは落馬がつきもので、走れば走るだけリスクも高くなってしまうからね。だから、限られたレース数の中でいかに経験値をためていくか。そういうことが大切になってきます」。落馬などによるケガが多い戦い。だからこそ、高い学習能力が重要になってくるのですね。

　これまで黒岩騎手がコンビを組んできた、イロゴトシやホッコーメヴィウスにはそれぞれタイプの違うセンスがあるらしく、「どっちも飛越のセンスだけじゃなくて、スピードもスタミナもありますね。イロゴトシはなかなかスピードが落ちないし、メヴィウスはスパッと無駄なく障害を跳びます」とお話してくださいました。

　騎手と馬の綿密なコミュニケーションがつくり出す、迫力満点の障害レース。それぞれのコースや障害の特徴をつかみながら見てみると、より楽しさが倍増しますよ。