松井と球児が共有するもの
【10月25日】
MLBヤンキース時代に松井秀喜の専属トレーナーだった小波津祐一(こはつ・ゆういち)と話をする機会があった。第21代巨人軍監督の就任会見が行われた翌日のことだ。
前回の続きを書く。
かつて、数年間ニューヨークで自宅とヤンキースタジアムの行き帰り、松井の車に同乗していた小波津は言う。
「ニューヨークの街が大渋滞でまったく車が動かなくなった日があってね…。試合がある日だから、おいおい、これ、間に合うのか…って時計を見ながら、こっちはどんどん焦ってきたんだけど、隣に座っている松井は焦る気配がない。いつも通り…。何事にも動じないんだよ。彼の動揺したところを見たことがないし、だから、僕に対してもそうだけど、どんな人に対しても態度が毎日まったく変わらなかった」
松井秀喜を知る球界のさまざまな人から、そんなふうな話は聞いたことがあった。どんなイレギュラーがあろうとも取り乱すことはない。不動の心。
ふだんからマイペース…そう表現する人もいたけれど、超一流のそれは、常民がマネても「お前がやるな」と言われて終わる。
とにかく、動じない人ほど怖いものはない。だって想像してみてほしい。戦況の良し悪しにかかわらず、ベンチでも会見でも顔色を変えない敵軍の将…。不気味でしかない。
とはいえ、一年目の苦心はあるはずだ。松井は就任会見で語っていた。ほぼ指導者経験のない自らを俯瞰し…
「12球団の監督の中で一番劣っている部分であると自覚しています」
おととい日本シリーズが開幕し、そこでホークスを倒すはずだった阪神はいま甲子園で秋季練習を行う。セ・パの様々な取材で宮崎へ飛ぶはずだった僕は台風30号の余波で飛行機をキャンセル。方向転換し、球界で要職に就く方々、シーズン中会えなかったカリスマともアポイントメントを取って当欄の蓄えにすることにした。
きのうは小波津の経験談を紹介し、MLB時代の松井秀喜の「取材に応じる姿勢」について書いた。あれだけの大物が、毎日、真摯に、メディア対応する姿に感動したという…。
でも、じゃあ阪神の選手が全員これに倣えるかといえば、物理的に現実的ではないというのが僕の見解。ただ、ひとつ第2次岡田政権からここ数年間の阪神を取材して感じることがある。
試合後、コーチ陣が「時間をかけて取材に応じる空気を感じない」ということだ。当然、個人差はある。が、僕が現場で感じたそのままを書けば、これはコーチの「責任」ともいえない。
試合の後「話しづらい空気」がいつの間にかできてしまったことに、昔は無かった閉塞感を覚える。その理由のありかは、正直分からない。ゲームの振り返りと、用兵や戦略など情報統制の類いは別物だ。現役時代から試合後の取材に真摯に応じてきた藤川球児は担当コーチが話しづらい空気を望んでいないはずだし、また、来季はそんな空気がなくなる期待感がある。
続きは次回。=敬称略=
