内角攻めの「流儀」を思う

 【6月20日】

 前川右京に「腕、腫れてない?」と聞けば、袖をめくって「腫れてないと思います」と言った。多少赤らんでいるが、たしかに全く腫れはない。あれだけまともに食らったのに?

 死球の一夜明け。それにしても、ごつい二の腕だ。日々のトレーニングの賜物…ってその類いの話を書きたいわけではない。このDeNAとの初戦、八回に村上頌樹の代打で出場した右京はその初球、いきなりぶつけられてしまった。それも野球。両軍その可能性がある以上、仕方ない。だけど、1打席にかける代打だから、なおさら打ちたい気持ちが強かったのでは?

 そう聞けば、右京は言う。

 「(塁に)出られたので」

 あれは2死一塁の戦況だった。「繋ぎ」という意味では良かったのかもしれないが、こちらは冷やっとした。

 「またか」の思いも募る。

 この試合、五回に森下翔太も死球をくらっていた。彼は今年もう9つ目である。指揮官の藤川球児は近本光司が死球を受けた4月末にこう語った。

 「相対的に見てちょっと多いね。野球を守らなければいけないのでこちらもグッと我慢をしていますけど…」

 あれから2カ月弱。相対的に多いままだ。チーム別の死球数を見れば、阪神はセ・リーグ最多タイの「30」。昨年は143試合で「41」だから。65試合の消化でこのペースはしんどいし、チームを預かる者としては奥歯がきしむに違いない。ちなみに与死球の数はリーグ最少の「17」だから、こんな言い方は乱暴だけど、割に合わない気もしたり…。

 森下が大事に至っていないことは幸いだが、これも強者の宿命なのか。背番号1が一流である証明の一つは死球後の打席で踏み込めること。前夜だってそう。あのキング弾は痺れた。

 死球後の一発といえば、金本知憲を思い出す。頭部死球の直後の打席で豪快に放り込んだシーンが懐かしいが、そんな金本から聞いたことがある。

 長年4番を担った鉄人は内角攻めの結果は「しゃあない」としながら、そのあと漏らした言葉に重みを感じた。

 「制球のない投手に、そこへ放らすのはちょっと違うけどな」

 「そこ」とは、言うまでもなくインコースの際どいところだ。投手の視点でいえば、内角要求は一歩間違えれば絶好球になる怖さがある。となれば、「ベース寄り」にいっちゃいけない心理がはたらく。だから「体寄り」にいく。そこへコントロールできるなら、どんどんどうぞ。が、投げきる技量がないなら、イチかバチか…ゆき先はボールに聞いてくれ、では困る。「一流の勝負」を望んだ金本の言いたいことは分かったし、僕もそんな「流儀」を期待しながら見るようになった。 

 さて、暦の上できょうは「夏至」。日の出から日の入りまでの時間が最も長い日をそう呼び、いよいよ夏本番を迎える。と同時に「夏至」を境にだんだん日が短く…つまり、ここから秋へ向かっていくことにもなる。近本光司の帰りを待ちながら、みんな「健康」で勝負の季節を迎えたい。=敬称略=

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