梅野が傷つけたくないもの
【1月15日】
キラキラの全盛期なら放っておいても人は寄ってくる。それを過ぎれば潮は引いてゆく。ドライな世界。梅野隆太郎の内心はどうか。野暮だから聞かないけれど、穏やかではないだろう。
先日、球団の幹部と束の間話す機会があった。「伏見寅威を獲ったのは驚いた?」。そう聞かれたので「ちょっとびっくりした」旨を伝えたが、それもまあ、この世界では「ある」こと。遊撃、左翼候補の補強もしかり。監督藤川球児のメッセージを想像すれば、生え抜きへのハッパが何割ほど込められているか。捉え方は自由だけど、大方それでは?というのが僕の見方。
梅野を新人の頃から知る。毎年1月は宜野座で自主トレを公開する。できる限りウチナーへ足を運び、彼の決意を取材させてもらってきた。年々取材カメラは減る。が、逆風だからって聞かない理由はない。キャンプ前に確かめたかったのは、何を拠り所に戦っていくのかということ。梅野は言った。
「積み重ねてきたキャリアを自分で傷つけないように。自分でダメにしないように。それをモチベーションとしてやっていきたいです。チームの同級生の間でも、それを心に留めて頑張っていこうという熱い話をして…すごくいいことやなと思って。このキャリアってなかなか積めるもんじゃないし、それを1年で傷つけるもんじゃないし…。それを拠り所にやっていくことが大事になっていくんじゃないかって」
岩崎優、岩貞祐太、原口文仁らとテーブルを囲んだ夜に心が決まった。
まだある。梅野が長年ここ宜野座で鍛錬を積んできた副産、いや、財産がそれだ。昨夏の甲子園大会を制した沖縄尚学の正捕手が大の梅野ファンであることを以前書いた。宜野座で生まれた宜野座恵夢(ぎのざ・えいむ)。彼は幼い頃から梅野を追い、拝み、野球教室で手ほどきも受けてきた。甲子園のV捕手は4月から地元の沖縄電力で野球を続け夢を探る。それが「プロ」ならば、今年35歳になる梅野のモチベーションに間違いなく繋がってゆく。
さて、当欄でずっと「筆者は補強論者」と書いてきた。阪神の企業努力を支持する一方で身びいきの重心は「生え抜き」に置く。ややこしい筆の自覚はある。スタメンマスクは坂本誠志郎を軸に梅野と伏見が控える、そんなシーズンの構図は想像がつく。しかし、俯瞰すれば贅沢な布陣だ。捕手併用の時代とはいえ、このメンツ、他球団は羨む。ここに栄枝裕貴ら若い力の台頭が叶えば、投手&捕手王国の輪郭が見えてくる。抗え、梅ちゃん。
自主トレ取材のあと、高校(沖縄尚学)から下校する宜野座恵夢クンと話をすることができた。
「外野手としてセンバツに出たときに、絶対もう一度捕手として甲子園に出たいと思ったのは、梅野さんのおかげ。梅野さんが拠り所になりました」
とてもいい話を聞かせてくれた。
「憧れられる」のもモチベーションに?そう聞けば、梅野は言う。
「野球人としてあるべき姿を忘れず1試合でも多く、1本でも多く…」=敬称略=
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