「プロ野球」を応援する

 【5月31日】

 また負けなかった。ほんまに強い。デイリー読者が愛するどこかのチームを思わせる快進撃だ。開幕から20試合負けなしはリーグ新記録。サッカーJ1で首位をひた走る川崎フロンターレである。

 土日連休だった僕はリアルタイムで阪神戦をチェックしながら、Jリーグの動向も追い掛けた。

 サッカー担当を離れて9年。各クラブの選手も様変わりした。新戦力、そして森保一好みの日本代表候補を探すのも楽しいけれど、昨年からずっと気になるのは、やはり、プロ野球と同じくスタジアムの入場制限の問題だ。

 先月末、Jクラブの20年度経営情報が開示され、約6割の34クラブが赤字、10クラブが債務超過に陥ったという報道を見た。入場料収入が前年から約6割減と落ち込み、決算は厳しいものに。この状況が長引けば存続が厳しくなるクラブも出てくるし、プロ野球だってもちろん対岸の火事ではない。

 そんなことを考えながら川崎フロンターレの試合を見ると、そうか…と胸が熱くなるシーンに出くわした。ホーム等々力の川崎サポーターがゲーム前の選手紹介で、相手チームの選手一人一人にも拍手を送っているのだ。これは、なかなかプロ野球では見られない光景。全クラブの応援スタイルを知らないので「知ったか」で書けないけれど、旧知のJリーグ関係者に聞いてみると、こう語る。 

 「入場制限、移動制限がかかるコロナ禍において、対戦クラブのサポーターで、川崎まで来たくても来られない人たちがいる。そういうサポーターたちの分も自分たちが拍手で相手チームをピッチへ送り出してあげようという気持ちでしょう。まずは敵味方ではなく『Jリーグを、サッカーを応援しよう』という精神だと思います」

 確かにそうか。

 昨年、普段そこにあるプロ野球がない時間を過ごした。その空白の長かったこと…。想像もつかない喪失感を味わうことになった。あえて憎きコロナ禍に感謝を言うならば、「野球のある日常」の有り難さをイヤというほど分からせてくれたことである。プロ野球が開催されなければ、また、戦う相手がいなければ、推し球団の勝ちも負けもない。いろいろな応援スタイルがあっていいと思うけれど僕は「川崎サポの拍手」に拍手を送りたくなった。

 先日のロッテ戦で鳥谷敬に向け「おかえり」と書いた。これに対し、ツイッター等で賛否両論のご意見をいただいた。否の方の中には「もう敵です」「おかえりなんて要らない」等々があった。分かる…めちゃめちゃ分かる。ただ、僕は「おかえり」を言いたくなった。当欄の考えを押しつける気持ちはないけれど、鳥谷の登場曲で打席に入った梅野隆太郎は「イキだな」と思ったし、かつてのキャプテンを拍手で迎えた甲子園の温かい歓声も嬉しかった。だって、それも、これも、そこにプロ野球があってこそだから。

 きょうからオリックス戦。能見篤史にはもちろん「おかえり」と書くし、拍手を送る。=敬称略=

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