Look at that!

 【4月12日】

 何年前だったか。仙台市内のレストランで金本知憲とランチの約束をし、その席に金本の知人がやって来たことがあった。その方と僕は初対面だったので名刺を交換し、挨拶すると…。

 「あ、デイリーさん…。お世話になります。阿部です」

 東北福祉大ゴルフ部監督・阿部靖彦だった。

 同大学の野球部だった金本と阿部がなぜ面識があるのか。金本によれば、「阿部さんは昔、福祉大の軟式(野球部)の監督をされたこともあってな。(硬式)野球部の部長の秘書みたいな感じで…」とのことで、卒業後もずっと親しい間柄だったという。

 なぜ、そんな話を?って、もちろんそうだ。

 日本時間の12日早朝から僕もテレビにくぎ付けになった。海外メジャー「マスターズ」で初優勝を果たした松山英樹は、アジア選手初快挙の喜びを、真っ先に阿部に報告したという。

 仙台のレストランで同席させてもらった日、金本と阿部が松山の話をしていたこと、そして、阿部の仲介で金本と松山の対談が実現したこと…いろいろ思い出した。

 松山「金本さんが手を骨折したままヒットを打ったのをテレビで見ていて、凄く感動したことを覚えています」

 金本「やばい、ダメだと思っても結構プレーできるものでね。でも、あれはマグレだけど…」

 そんなやり取りがあったのが13年だから、あれから8年。

 松山はアマチュアで初出場して以来10度目のオーガスタで悲願を達成し、金本もテレビ画面を通じ後輩の偉業達成に拍手を送ったわけだ。

 僕も早朝4時前から中継を見たけれど、印象的だったのは、ゲスト解説で東北福祉大の先輩・宮里優作が涙声で称えていたこと。実況アナウンサーも泣きながら伝えていたし、まったく部外者の僕まで朝から泣けてきた。

 あれは確か17番だったか。中継の中で宮里がこんなエピソードを紹介していた。

 「練習しているとき、周りの海外の選手が彼(松山)の下半身を指さして言うんですよ。『Look at that!』。見ろよあの太腿(もも)を!って」

 そう言われて注目してみると、確かにウエアを着ていてもその大きなお尻、下半身がよく分かる。

 トレーニングを積んだ証し…それこそ、金本に聞いてみよう。

 ずばり、松山英樹の強さ、スゴさって、どんなものだと?

 金本「松山のスゴさか…。やっぱりハートの強さじゃないかな」

 最終日もそれは際立ったし、3日目は11番のティーを大きく右に曲げたピンチの局面を乗りきったけれど、そのシーンを振り返る松山のこんなコメントがまさにそうだったような気がする。

 「一番悪いショットを打ったので、これ以上悪いショットはもう打たないと思った」

 タイガースの選手にもきっと響く王者のメンタル。一流に備わる強靱なハートである。=敬称略=

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