阪神・下村 涙のプロ初星 手術乗り越え3年目「心配ばかりかけた」両親への思い溢れた 巨人3連倒3差 15日にもM点灯
「巨人2-3阪神」(13日、東京ドーム)
涙の1勝だ-。阪神は3年目の下村海翔投手(24)が5回2失点でプロ初勝利を挙げた。右肘手術と長期間のリハビリを乗り越えた2023年度のドラフト1位右腕は、観戦に訪れた両親の前で待望の瞬間を迎え、思わず感極まった。チームは逆転勝ちで4連勝。首位攻防戦で2位の巨人に3連勝とし、3ゲーム差をつけた。最短で15日にも優勝マジックが点灯する。
誰もがこの瞬間を待っていた。初勝利が決まると、下村は満面の笑みで立ち上がり、ナインに祝福された。ハイタッチを終えると、ウイニングボールを携え、藤川監督と記念写真に収まった。ヒーローインタビューでは思いを抑えられなかった。浮かんだのは支えてくれた両親の姿だった。「入団してから心配ばかりかけていた。時間はかかってしまったけど、勝てて良かった」。光るものが頰を伝った。
粘りの投球だった。三回、中山に2ランを被弾。先制を許したが、崩れなかった。四回1死一、三塁。敵地の虎党に重苦しい空気が充満した。ここでキャベッジを3球で追い込むと、再び右腕を後押しする声援が大きくなっていった。4球目はワンバウンドのフォークを振らせて三振。続く石塚へは一球で投直。正面低めへの速い打球だったが、片足立ちで捕球。さすがの運動神経でなんとか切り抜けた。「ピンチを背負ってしまった以上、ゼロでという思いで向かっていくしかない。良い結果になって良かった」。五回も抑え、後は勝利を願うだけだった。
直後に女房役の坂本の逆転弾。「あそこで逆転してくれると思わなかったので、打った瞬間、飛び跳ねるように喜んでしまった」。ベンチでも感謝を伝えた。
悲願だった。2年を要したリハビリの過程で自己嫌悪に陥った日もあった。「先輩の話を聞くと『毎日泣いていた』って。俺はなんで涙が出ないんだ。人が投げていることに嫉妬もしない。思いきり野球をやれていないのか」。自分を責めたが、右腕を奮い立たせたのはファンの声援だった。「『頑張って』の一言をくれるだけでもうれしい」。SGLでのプロ初登板の日、声援に「鳥肌が立った」。毎日、球場に足を運んでくれた虎党の思いを背負ってマウンドへ立っていた。
身長は170センチと恵まれた体格ではない。「小さい分、みんなに追いつきたかった」。悶々(もんもん)とした日々の中で体づくりに取り組んだ。股関節と肘を使ってバーベルを上げる「クリーントレーニング」では体重70キロながら125キロを上げた。瞬発力、爆発力では投手陣で右に出る者はいない。30メートル走は3秒7とチーム内では前人未到の記録も打ち立てた。元来、持ち合わせていた強力なバネを投球に昇華させた。「大きい人は(腕の)遠心力ですごい力に変わる。僕は小さくても迫力を出せるように」。プロ入り後、最速の153キロ直球は努力の証しだった。
これで巨人との首位攻防戦は3連勝。最短で15日に優勝マジックが点灯する。「1軍で勝つことを目標にリハビリを頑張ってきたので、本当にうれしい」。苦労人が踏み出した大きな一歩が、Vロードを加速させていく。
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