糸井嘉男氏 阪神・西純に助言「いつか投手に戻れるかも」は捨てろ 自身も同じ24歳で野手転向、心得伝授
阪神、オリックス、日本ハムで活躍し、今春の阪神キャンプで臨時コーチも務めたデイリースポーツ評論家・糸井嘉男氏(44)の「超人目線」。今回は野手転向を決めた西純矢投手(24)について語る。今月8日、球団SAとしてSGLの残留練習を電撃視察した背景にあった秘話も告白した。くしくも同じ24歳での野手転向。いばらの道に挑む後輩に心得を直接伝授し、第2の超人としての成功に太鼓判を押した。
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今月8日、SGLの残留練習に行きました。予定にはなかったので、なぜ?と聞かれましたが「若い子たちを見に来た。多分、後々には分かると思います」とはぐらかしたのは、純矢に会うことが理由だったからです。実は前日、輝を通じて「糸井さんに相談したい」と言っていると聞き、すぐに飛んで行きました。
僕は日本ハムに入団して3年目、高田繁GM(当時)に「糸井くん、投手では使えないよ」と言われ「1週間あげるから、どうするか考えなさい」と打診を受けました。すごく悩んだ記憶があるので、純矢もきっとそうだろうと。何を伝えるか考えましたが、実際に会うと意外にスッキリとした表情で言われました。
「勝負を懸けます」
頭の中では結構、整理が付いていたのでしょう。僕には最後のひと押しをしてもらいたかったのかなと思います。いろんな話をしましたが、一番に伝えたことは覚悟です。「いつか投手に戻れるかも」という未練や、「コンバート1年目」という甘えを捨てる覚悟。何かにすがる考えを排除して野手一本、全てを懸ける気持ちでやろうなと。
当然、並大抵の努力で成功できる世界ではありません。時間もない。僕も「野手なら、2、3年は見てもらえますか」と聞いたら「見ないよ」と言われました。それでも、やらなしゃあない。1日、1箱約200球のカゴを10箱以上は打ちました。両手のマメがつぶれ、汁が出る。夜、つぶれたマメを火であぶって固めるのが日課。痛みでバットが手から離れない日は握ったまま眠りました。
他の野手から比べたら何億スイングも遅れている。そんなライバルを抜かすには練習しかない。ただ、それでもこれから幾度となく絶望を味わうでしょう。僕も野手としてのデビュー戦は5打数1安打、3三振。ヒットも三塁前に転がったボテボテの内野安打。ヤクルト・鎌田投手のスライダーが見えず「これ、どうやって打つん…」と落ち込みました。
ただ、どんな壁も練習で越えることができる。純矢にはそんな話もしました。彼には2軍戦で手も足も出なかった僕よりポテンシャルを秘めています。実際、22年5月のヤクルト戦では、高橋奎投手からプロ初本塁打も打っています。僕も実際にベンチで見ていましたが、WBCでも活躍したようなスーパーピッチャー。まぐれで本塁打は打てないですからね。
それにSGLという素晴らしい環境がある。本当にすごい施設です。間違いなく成長スピードは速くなるし、絶対に大丈夫。いつか「ここで練習したから」-と言えるくらい、1軍で活躍してほしいと思います。24歳と言えば僕が野手に転向した時と同じ年齢。SAという立場でチームに携わっていますし、なにか不思議な縁を感じています。全力で支える覚悟ですし、全力で応援するつもりです。頑張れ、純矢。
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