阪神・早川 球団育成初プロ1年目1勝 足つりかけても快挙5回0封「もっと良いピッチングができるように」

 「DeNA1-2阪神」(27日、横浜スタジアム)

 孝行息子の誕生だ。育成ドラフト3位の阪神・早川太貴投手(25)=くふうハヤテ=がプロ初先発し、5回2安打無失点でプロ初勝利。DeNA・東に投げ勝ち、球団育成出身選手初となるルーキーイヤーの白星を挙げた。プロ初登板でのボークを経て大きく成長した背番号「31」が、2年ぶりのリーグ制覇を引き寄せた。

 試合が終わった瞬間、仲間たちに肩を叩かれ、ホッとした表情を見せた。早川がプロ初先発初勝利。チームが優勝争いを繰り広げる中、任された大役。東との投げ合いをルーキーが制した。憧れの岩崎からウイニングボールを手渡されると、重圧から解放され、満面の笑みがはじけた。「率直にまずうれしいっていうのが一番。もっと良いピッチングができるように頑張りたい」。77球の熱投が実った。

 一、二回は三者凡退と最高の立ち上がり。沈み込むような投球フォーム。直球の球速は140キロ台と決して奪三振が多い投手ではない。球持ちの良さとコントロールが武器だ。

 先頭の筒香に初安打を許した四回は異変が起きた。大量の汗をかき、右足をつりかけた。一度はベンチへ下がり、ここで交代かと思われたが、再びマウンドへ戻った。1球でオースティンを二飛に。後続も断った。

 五回2死三塁は蝦名を空振り三振。5回2安打無失点。「腕を振ってゾーンで勝負することを意識しました。粘りの投球はできたと思います」。圧巻の投球で敵地をざわつかせた。

 異色の経歴を持つ。国立の小樽商大を卒業し、22年に北広島市役所に就職。プロを諦められず、クラブチームで野球を続けた。2年目の23年。同市に日本ハムの新本拠地であるエスコンフィールドが完成した。地元は盛り上がったが、早川は見に行かなかったという。

 「プロのピッチャーとしてそのマウンドで投げるまではエスコンに行かない」

 定時は8時45分から17時15分。毎日始業前に必ず練習してから仕事に向かった。24年にくふうハヤテに入団。24年度育成ドラフト3位で阪神から指名を受けた。次は凱旋登板を果たす番だ。

 育成入団から7月に支配下登録を勝ち取った。7月16日の中日戦で九回2死一、三塁からプロ初登板を果たしたが、緊張からボークで三走を生還させるホロ苦デビュー。この試合を最後に降格となり、壁にぶち当たった。

 そんな中、チェンジアップの質に悩みを抱えていた右腕は西勇に相談を持ちかけた。「腕をめっちゃ振らないと奥行きが出ないと考えた。感覚や練習方法を聞いた」。返ってきたのは予想もしない回答だった。「技術よりももっと先の事を考えて、安定した土台やボールをコントロールできるような練習をやった方がいい」。小手先の技術よりも必要なことに気づいた。師匠の金言が今の早川を作り上げている。

 育成出身投手が1軍で先発するのは球団初の快挙。育成出身投手の新人勝利も初。「諦めないで頑張ってきてよかった」。苦労がようやく報われた。「タイガースの先輩方に割って入っていけるような投手になりたい」。早川の物語は始まったばかりだ。

 ◆早川 太貴(はやかわ・だいき)1999年12月18日生まれ、25歳。北海道出身。185センチ、95キロ。右投げ右打ち。投手。北海道大麻、小樽商大、ウイン北広島、くふうハヤテを経て24年度育成ドラフト3位で阪神入団。25年7月に支配下選手契約。プロ初登板は同年7月16日・中日戦でリリーフ。

 ◆阪神育成ドラフト出身投手のプロ1年目 育成ドラフトから阪神に入団した投手は計9人で1年目に1軍デビューしたのは今季の早川と工藤の2人。これまでの7人と早川と工藤の今季成績は以下の通り。2008年①・吉岡興志、09年①・高田周平、10年②・島本浩也、17年①・石井将希、20年①・岩田将貴、21年①・伊藤稜、23年①・松原快、24年①・工藤泰成=14試合2敗1ホールド、防御率3.95、24年③・早川太貴=2試合1勝、防御率0.00。(注)年はドラフト年度、丸数字は育成ドラフト順位。

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