【神機一転】手嶋秀和さん 球団トレーナーから“恩返しの挑戦”

 新しい人生に挑戦する虎戦士の思いをお伝えする「神機一転」。番外編として手嶋秀和トレーナーを紹介する。球団在籍12年間の経験を経て来年1月に、「甲子園スポーツトリートメント治療院」をオープンさせる。

  ◇  ◇

 自宅に新設した院内には、所狭しとお宝が並ぶ。球団トレーナーとして12年の財産。今年限りで退団する手嶋秀和さんが来年1月6日に「甲子園スポーツトリートメント治療院」をオープンさせる。福留に糸井、藤浪。玄関を開けると、サイン入りのバット、ユニホームが患者を迎える。

 「辞めるかどうか、葛藤はずっとありました。チームは大好きですしね。でも一人一人と向き合い、ケガを早く的確に治す施設を確立したかったんです」

 勝ち負けに一喜一憂できる世界。やりがいを感じる一方、ケガに泣く選手を見てきた。リハビリからスタートするプロ生活。そんな選手もいた。「プロになれる要素がある子たちがいる中で、ケガさせず上手になっていくことを手助けできれば、全体のスキルが上がるのでは」。野球界への感謝、貢献したい気持ちが背中を押した。

 思い出は数限りない。昨年9月14日のヤクルト戦。球団の代打最多安打記録到達に王手を懸けていた原口が、死球を受けて左手第5中手骨を骨折した。復帰は絶望的な診断。ねぎらいの言葉が続く中、2人は最短復帰の可能性を探った。懸命のリハビリを経て、わずか13日間で1軍再昇格。球団記録に並んだ。

 「何言ってんの、終わんねえよ、って。数え切れないけど、ケガをした選手が1軍の試合に出た時は一番うれしかった」。痛みを緩和させるために、2人で試行錯誤して作ったバットは院にある。「テシさんと作ったものだから。置いていきますね」。原口の感謝だった。42歳で戦う福留からは「ここまでしてもゲームに出るんだ」という執念を学んだ。

 後ろ髪を引かれながら、退団を伝えた翌日。携帯電話が鳴った。矢野監督だった。「決断を尊重するし、応援したい。また力を貸してくれな」。ソッと背中を押す言葉がうれしかった。「携わった選手がプロで活躍する。それが阪神だったら、最高ですね」。確かな技術と経験に、支える“仲間”の存在がある。恩返しの挑戦。第二の人生を全力で駆ける。

 ◆手嶋 秀和(てじま・ひでかず)1982年7月19日生まれ、37歳。横浜市出身。私立鎌倉学園を経て、東京衛生学園専門学校で鍼灸マッサージの資格を取得。08年、球団本部管理部にトレーナーとして入団。来年1月6日に「甲子園スポーツトリートメント治療院(兵庫県西宮市浜甲子園)」を開院する。完全予約制。スポーツ選手だけではなく、一般の方の治療も可能。問い合わせ、予約、相談はライン(kst2020106)にて。詳細は同院のフェイスブック、インスタグラムで確認を。

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