「打率1割男」新井が黄金週間歓喜締め

 「阪神3-2中日」(6日、甲子園)

 奇跡が起きた。阪神・新井良太内野手(31)が八回に代打で追撃の1号ソロを放ち、2-2の九回2死満塁で中前にサヨナラ打を放った。開幕から打撃の状態が上がらず苦しんでいた男が、大型連休最終日に、懸命なスイングで劇的な勝利へ導いた。

 想像もしなかった結末にわれを忘れた。感情に身を任せて暴れ回った。ヘルメットを高々と投げ、一塁ベンチ前ではファンに右拳を突き上げる。和田監督には飛びつき、抱きついた。ゴールデンウイーク最終日。良太が黄金の輝きを放った。

 お立ち台に立つと、苦悩の日々が脳裏を駆け巡る。黄色く波打つスタンドを眺めながら声を震わせた。

 「もう最高です。ほんとよかったです。ちょっとまだ興奮が収まらないですね」

 この試合まで20打数2安打で打率・100。苦悩の日々を過ごしてきた男に、奇跡的なシナリオが用意されていた。1点を追う九回2死走者なしから同点とし、なおも2死満塁。バットを短く持って打席に立った。

 「足はガクガクだった。食らい付くだけだった」。又吉が投じたボール球の外角スライダーを、体勢を崩しながらバットの先で拾った。中堅左で打球が弾む。12年9月2日の広島戦以来3年ぶり、自身3本目のサヨナラ打で連勝に導いた。

 劇勝への流れも自身でつくり出していた。2点を追う八回1死は代打でバルデスから左中間へ1号ソロ。昨年4月23日の中日戦以来3本目の代打弾で反撃への機運を高めた。

 誰もが認める努力が結実した。昨年6月は出場機会を求めて、自ら右翼の守備練習を開始。フリー打撃の打球を追い、周囲に助言を求めた。その姿に福留は「どん欲だし、目の色が違った」と言う。

 今も練習量はチーム屈指だ。最近は試合後でも鳥谷と2人で、打撃練習を続けた。平田ヘッドコーチは「いつも最後まで練習している」と取り組みを評価する。

 だが、努力に相反して結果は伴わず、2軍降格の可能性もあった。この日の活躍は崖っぷちでようやく見えた一筋の光だった。

 ただ、ここは通過点。落ち着きを取り戻すと、周囲への思いを明かした。「使ってくれた監督。たくさん声を掛けてくれたコーチ。トリさんも選手も声を掛けてくれた。それに応えられたことが一番、うれしい」。期待を裏切ってきた事実は忘れていない。ここから良太の恩返しが始まる。

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