“乱心”マートン一夜でヒーローに変身

 「阪神3‐1広島」(15日、京セラ)

 前日退場の“戦犯”が一夜明けて心を入れ替え、ヒーローに変身した。1‐1の八回、マット・マートン外野手(31)が決勝の中越え9号2ランだ。この一振りで100%みそぎが済んだ…とは言えないが、価値ある一発。マートンさんよ、心は熱く、でも冷静に!全打席でそれを忘れないように‐。

 マートンがほえた。どんなにビッグショットを放とうが、打った時には感情を前面に出さなかった男が一塁を回ってほえた。それほど打ちたかった一発。返上したかった汚名‐。前日14日、審判への侮辱行為で退場処分を受けた助っ人が、決勝弾で信頼を取り戻した。

 「スイマセン、バカガイコクジンデス、ゴメンナサイ…」。お立ち台でマートンが発した第一声は日本語での謝罪だった。前日の試合序盤に感情をコントロールできず、4番が退場しての敗戦。この日、ファンとチームにせめてもの“みそぎ”を果たすことができる場面は、同点に追いつかれた直後の八回だ。

 1死一塁。3球で追い込まれたが、低めの変化球を自信を持って見極めた。「プロだから切り替えて臨みたかった。審判の方も(前夜に)とらわれずに(ボール、ストライクを)取ってくれた。感謝したい」とフルカウントに持ち込んだ7球目、真ん中高めの138キロ直球を完璧に捉えた。

 打球はグングン伸びてバックスクリーンを直撃。両手に残った最高の感触に「いいですよ、すごい」と満面の笑みを浮かべた。お立ち台では、全身を包み込む大歓声に興奮を隠さなかった。その12時間前は、助っ人の心は沈んでいた。犯してしまった過ち。それを救ってくれたのは、ひたむきな高校球児の姿だった。

 この日午前、マートンは家族と一緒に甲子園を訪れた。「前から雰囲気を味わってみたかった」と夏の全国大会を初観戦=顔写真。目の前には1球、1球に全力を尽くす少年たちがいた。負けて涙を流すほどひたむきに、精一杯の力でボールを追いかける高校生たちがいた。

 「自分の少年時代に戻った時のような感じで野球が見られた」。幼少期、米大リーグ、マーリンズの試合を家族で初観戦したときの思い出‐。野球が楽しかった、プロの一振りに心を躍らせた“原点”を高校野球が思い起こさせてくれた。

 球場入り後に和田監督と話し合い、4番の重要性を諭された。加藤コミッショナーから厳重注意と制裁金10万円が科されたが、球団からの処分はなかった。そして放った決勝弾。指揮官も「気持ちをしっかり入れて球場に入ってきてくれた。4番が良い仕事をしてくれた」と目を細める。「ファンの方、チームの方に支えられた」と再び感謝の言葉を口にしたマートン。その目にはもう、一点の曇りもなかった。

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