マートン4番の仕事!本能信じ決勝打

 「中日0-1阪神」(11日、ナゴド)

 本能だけを信じた。小熊のデータ、対戦経験も一切、なかった。「初対戦だったので、自分の本能を信じて強く振ることだけを意識した」と阪神・マートンは冷静に打席での心境を明かす。心の奥底にしまっていたスラッガーの本性‐。封印を破った初球、見逃すわけにはいかないボールが視線に飛び込んできた。

 真ん中高めに来た139キロの甘い直球。マートンはダウンスイングで完璧に捉えた。快音を響かせて左中間へと伸びていった白球。そのままフェンスを直撃し、わき上がる虎党の大歓声をバックに、一塁走者の鳥谷がホームを駆け抜けた。

 0‐0で迎えた延長十回2死一塁、4番が放った一打は決勝の左中間適時二塁打。長打が欲しい場面で「早いカウントからは強くたたこうと思っていた」と狙い通り、一振りでゼロ行進に終止符を打った。9回無失点と好投した藤浪に白星をつけ、3カード連続の勝ち越しへ導いた4番の一振り。和田監督も「あそこで決めるのが4番。大きな仕事をしてくれた」と称賛を惜しまない。

 普段は長打を捨て、コンパクトなスイングに徹するマートン。チームが勝つために確実に任務を遂行する一方、打者として長打へのあこがれを失ったわけではない。

 札幌で行われた今年のオールスター第1戦。マートンはDeNA・ブランコ、ヤクルト・バレンティンと打撃論を交わした。試合前練習中、バットを持っての身ぶり手ぶりで技術を吸収した。

 「ホームランの打ち方を教わったんだ。いつも一、二塁間を抜くだけだから」とマートン。だが後半戦の開幕と同時に長打への意識は捨てた。普段の形に自らをあてはめた。禁断の長打狙いで見事にゲットした決勝タイムリー。本塁打王を争う2人のアドバイスが生きたことは間違いない。

 14打席ぶりの安打を放って関西へ戻るマートン。巨人を猛追するには、マートンがヒットを量産することが絶対条件。一方で、荒々しくも勝負強い4番の姿も必要だ。

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