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「朗読教室」が静かなブーム 竹野内豊のドラマでも話題、声を通じた「人生のレッスン」

生徒に向けてお手本の「朗読」を示す若谷佳美講師
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 「朗読教室」が静かなブームを呼んでいる。昨秋、竹野内豊主演のNHKドラマ「この声をきみに」で教室を舞台にした大人のラブストーリーが描かれ、SNSなどで話題となった。声を出すことで心を開放する場として、幅広い人たちの注目を集めているのだ。ドラマから1年、今なお学ぶ人たちが増えつつある教室を訪れてみた。

 1年前のドラマは家族に見捨てられた気難しい数学教師が、ふと訪れた「朗読教室」に通うことで人生を変えていくストーリー。ミステリアスな女性講師と声を通じた「人生のレッスン」を重ねる中で、個性豊かな生徒たちと一緒に成長してゆく主人公の姿が見どころだった。実際のレッスンはどのようなものだろうか-。

 伺ったのは「六甲道ミュージックスクール」(兵庫県神戸市灘区)。指定された土曜日午前のクラスに入ると、講師の若谷佳美さん(57)をコの字に囲むように5人の生徒が座っている。皆、打ち解けた雰囲気で談笑中。が、講師の掛け声とともに雰囲気は一転。「では、発声練習!」の合図で全員起立!背筋を伸ばし声をそろえて発声を始めた。15分ほど続け、喉が開いてきたところで「次は滑舌練習!」。アナウンサーなどが使用する早口言葉を1人1人順番に読み上げていく。複雑な言葉の羅列をすいすいと口にしていく技術に驚かされる。想像していたよりもずっと本格的な練習風景だ。本番の朗読練習は、全員の声と舌の調子が整ってきた頃合いを見はからって行われる。

 現在スクールの「朗読教室」は4クラスあり、来年1月からは更に1クラス増える予定。男女比は1対9で年代は20~70代までと幅広く、職業も声優の卵から司書、OL、元大学教授、主婦、など様々な立場の人が通う。読み聞かせの技術を上げたい、読解力を高めたい、喉の健康のために…などなど始めた動機も千差万別だ。

 着席した後、いよいよ朗読練習開始。現在は来年に控えた発表会に向け、各自が選んだ課題書を練習中。5人の選んだ本を挙げてみると…

・小泉八雲の「雪女」

・夢野久作「雨ふり坊主」

・西加奈子のエッセー「ごはんぐるり」

・野地秩嘉のルポルタージュ「ヨーロッパ食堂旅行」

・印刷インキメーカー・DICのCMで女優の吉岡里帆が朗読する詩「いろどりの詩(うた)」と乙一の異色の児童書「ボクのかしこいパンツくん」

と、ジャンルも内容もバラエティー豊か。朗読の持ち時間は1人5分強で、生徒が自分なりの解釈で朗読した後、講師の若谷さんが改善点を細かく指導していく。

 例えば、「お雪の“決して言わない”というセリフも懇願ではなく“言うな”という言外の命令を込めてみては」と若谷さん。お手本の読み方をしてみせ、生徒はそこに込められた繊細なニュアンスを聞き取り自身の朗読に反映させる。再読を繰りかえすことで、キャラクターの輪郭が明確になり、迫力が格段に増していく。その様子を他の生徒は、全身を耳にして真剣に聞き入る。ぴん、と張り詰めた空気の中、皆の心が一つにまとまり、語り手が文字の世界に込めたいと願う想いに寄り合わさっていく。朗読には他者への理解と共感力を高める力があるのかもしれない。前述のドラマでもそれぞれの「生きづらさ」を抱えた登場人物たちが、朗読を通して「人生のレッスン」を重ね、自分や他者と向き合い、心を通わせていく様子が描かれていた。

 朗読を教えはじめて10年になる若谷さんは「朗読は幾つからでも始められます。若い時は瑞々しい感性を、年齢を重ねてからは豊かな人生経験から得たものを声にのせることで、人の心に響く朗読になると思うのです」とレッスン後、語った。(神戸新聞特約記者・山本 明)

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