熱中症予防から「おもてなし」 奈良のゲストハウスで“外国人向け折り紙教室”

 訪日外国人向け「熱中症予防啓発リーフレット」が古都・奈良で思わぬ効果を生んでいる。チラシでは熱中症情報の掲載だけでなく、切り取って折り紙を楽しめるように「かぶと」の折り方も紹介。これに着目し、意外な「おもてなし」で観光客を喜ばせているゲストハウスがある。

 東大寺など観光スポットが多数存在する奈良には、年間で約200万人の外国人観光客が訪れる。盆地特有のじっとりとした暑さが町全体を覆い、7月後半の最高気温は35℃前後、熱中症情報は8月いっぱいまで「厳重警戒」とされている。奈良公園の鹿たちもぐったりしているが、年々増加する外国人観光客にとっても、慣れない「酷暑」は大問題だ。

 日本気象協会による「日本の暑さ」に関する調査では、79%の在留外国人が日本の夏を「過ごしにくい」と答え、なんと75・5%もの人が「めまい」などの症状を含む熱中症を「経験したことがある」と回答した。事態を重く見た同協会は今年、訪日外国人向けの「熱中症予防啓発リーフレット」を新たに作成。そのリーフレットをヒントに、あるゲストハウスが新たな「おもてなし」を始めた。

 「ならまち」の南の玄関口として、近年新たなにぎわいを生み出している「京終(きょうばて)」周辺。今春、明治時代の駅舎が復元されたJR京終駅ほど近くに、築約100年の町屋を改装した「町屋ゲストハウスならまち」がある。各種ドミトリーのほか、床の間のある落ち着いた和室でゆったり過ごすこともできるとあって、外国人も多数訪問。オーナーの安西俊樹さんは、宿泊客に奈良の良さを知ってもらおうと、社寺やさまざまな行事の案内もしている。

 リーフレットには熱中症の症状や予防対策を紹介する「熱中症ゼロへ」webサイトのQRコードが印刷されており、英語で応急処置法や119番通報の方法を記載。それだけでなく、切り取って折り紙を楽しめるよう「かぶと」の折り方も紹介されている。安西さんは「日本文化に親しみながら、熱中症やその対応策について知ってもらう」という趣旨に共感。「かぶと」を実際にかぶってもらおうと、希望する宿泊客に折り紙レクチャーするという。

 「近所に住む折り紙の先生と相談して、風で飛ばない工夫ができないかと考えてみた」。新聞紙ではやわらかすぎてかぶりにくいのではと、掲載期限の終わった観光ポスターを使って試作。滞在中だったオーストラリアの母娘にかぶってもらったところ、2人とも大喜びだった。旅行の思い出になり、熱中症予防にも役立つ折り紙。奈良の新たな夏の風物詩となるか。(デイリースポーツ特約記者・鹿谷亜希子)

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