広島・GK林卓人 猛練習に支えられる20年目の守護神

 今から20年前、21世紀になったばかりの練習場で、18歳の若者はボールにずっと立ち向かっていた。金光大阪高からJ1広島にやってきた無名のGKは、ただただ上手くなりたくて、トレーニングに自分の全てを賭けた。汗と泥にまみれた若者の息ははずみ、時に足元もおぼつかないほどに疲労が蓄積。それでも、若き林卓人は自分の全てを練習にぶつけた。クラブハウスに引き揚げるのは、いつも最後だった。

 2015年、平均失点0・88、3本連続してPKを止めるというすさまじい活躍で優勝に貢献。2018年には数々のビッグセーブで2位躍進の原動力になった。ベストイレブンやMVPといった個人タイトルとは縁遠いが、まぎれもなく日本有数のGKであり、広島のクラブ史に輝く名手である。

 もちろん、才能なくして日本代表にはなれないし、王者のゴールマウスは守れない。ただ、林卓人を支えていたのは紛れもなく、猛練習の継続だった。

 「僕よりも練習している選手はたくさんいる」と林は言う。そうかもしれない。しかし、練習が林卓人という選手を形づくったことは間違いのない事実だ。「自分自身の成長のために、技術にしてもフィジカルにしても、試合で使えるもの、通用するものを磨き上げるのが練習。自分は(サッカー選手として)いろんなことを始めるのが遅くて、その差を埋めるために、やらなきゃいけないことが多かったから」

 昨年、腰の状態が思わしくなく、シーズンの前半を棒に振った。トレーニングも万全でやれない状況が続き、「明日はまたピッチに立てないかもしれない」という不安も存在した。だがシーズン終盤、居残りで激しい練習を続ける林の姿が。「ようやく(強度を)上げられる状態になった」と手応えも口にした。

 2020年指宿キャンプ。誰よりも早く練習場に出て、最後の最後まで練習を続ける20年目の守護神。ルーキー時代と同じように汗と泥にまみれる姿が見られる喜びを、筆者はかみ締めている。(紫熊倶楽部・中野和也)

 ◆林 卓人(はやし・たくと)1982年8月9日生まれ。大阪府茨木市出身。ポジションはGK。188センチ、87キロ。背番号1。金光大阪高を経て01年に広島入団。05年に札幌に移籍し、正GKの座を奪う。07年途中に仙台に期限付き移籍し、10年に完全移籍。14年に広島に復帰した。世代別の日本代表にも選ばれ、12、13年にはA代表にも選出された(出場機会なし)。J通算476試合に出場。

関連ニュース

編集者のオススメ記事

サッカー最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    スコア速報

    ランキング(サッカー)

    話題の写真ランキング

    デイリーおすすめアイテム

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス