田中陽4戦連発!U20女子韓倒で初4強

 「U20女子W杯・準々決勝、日本3‐1韓国」(30日、国立)

 宿敵破り、女子サッカー界に新たな歴史を刻んだ。U‐20日本代表「ヤングなでしこ」は韓国を3‐1で破り、大会初の4強進出を決めた。日本はエースMF田中陽子(19)=INAC神戸=が、大儀見優季の持つ国際Aマッチ4試合連続ゴールの日本女子記録に並ぶゴールを決めるなど3得点で、2年前のU‐17W杯決勝戦で敗れた韓国を撃破した。9月4日の準決勝では、31日に行われるドイツ‐ノルウェーの勝者と戦う。

 雪辱の歓喜は控えめだった。チームメートが笑顔でベンチへ駆け出す中、MF田中陽は、ピッチでうなだれる韓国のエースFW余ミン智の肩に手をやり、健闘をたたえた。「次があるんだ」。試合終了の瞬間、浮かんだ思い。「何がなんでも勝ちたいと思っていたので、うれしい」。そんな感情を派手に体現せず、静かな闘志を胸に頂上を見据えた。

 初戦から4試合連続ゴールで、日本を初の4強進出に導いた。2‐1の前半37分。右サイドで突破を仕掛けたDF高木(早大)からのマイナスのクロスに反応した。冷静に右足を合わせ、3点目をゲット。「理想通り」という値千金のゴールで、シーソーゲームの主導権をたぐり寄せた。

 前半8分にMF柴田のゴールで先制するも、同15分にFW全銀河に同点ヘッドを許した。4分後に再び柴田のゴールで勝ち越したが、安全圏にほど遠い。初戦から全試合でゴールを決めてきたエースの本領発揮で難敵にダメージを与えた。

 目の前で歓喜する宿敵の姿が忘れられなかった。10年のU‐17W杯で日本は韓国に延長PK戦で敗れ涙をのんだ。1人目のキッカーとしてPKを決めた田中陽は「相手の喜ぶ顔しか覚えていない。やり返したいと思っていた」と、リベンジに思いをはせ今夜の試合に臨んでいた。

 ロンドン五輪の男子サッカー韓国戦で、政治的な問題がピッチに持ち込まれた。この夜も政治団体の街宣車が神宮外苑を走るなど、やもすれば20歳以下の少女たちの背中にも、目に見えない重圧がのしかかっていたかもしれない。

 韓国ドラマ「美男(イケメン)ですね」で主演した韓流スターのチャン・グンソクにはまり、ビッグバンや少女時代ら同国の人気ユニットのリズムを好むなど、普段から隣国の文化に親しむ19歳。隣国を倒す気概は、純粋にサッカーで雪辱に燃える感情だけだった。

 日本女子代表FW大儀見優季の持つ国際Aマッチ4戦連続ゴールの日本記録に並び、勝利に花を添えた。「準決勝も勝って優勝したい」。大一番を乗り越えた田中陽は、悲願だけを見据えた。

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