業界歴45年のマジック!ロッシー小川が作り上げた極上のスターダム・テイスト

 女子プロレス団体「スターダム」の創始者で、指揮官として現場を仕切るロッシー小川(小川宏)エグゼクティブ・プロデューサーがマット生活の節目を迎える。広島県立ふくやま産業交流館ビッグローズ大会が開催される5月1日は65歳の誕生日で、今秋には1977年に20歳で全日本女子の専属カメラマンになってから業界歴も45年になる。

 11年1月に資本金100万円で旗揚げしたスターダムは、今や30選手超の陣容を誇る団体に大化けした。19年にブシロードファイトに事業譲渡して脱皮。10周年イヤーの昨年は年商5億円で、観客動員も新型コロナウイルス禍の中で4万7405人(新日本、ドラゴンゲートに次いで3位)をマークした。今年も3月に両国国技館2連戦を開催するなど勢いは止まらず、年商も倍増の10億円を目指して爆走する。

 女子マットの“生き証人”となるべく第一歩は、テレビのプロレス中継にはまった小4から始まった。中3のころは毎月のように千葉市から後楽園ホールに通った。高校生になると外国人選手の宿舎ホテルに潜入してカメラを向け、サインをもらった。

 76年に写真専門学校に入学。アントニオ猪木-モハメド・アリ戦(同年6月、日本武道館)では2階席から望遠レンズを構えたが、途中からアリーナに移動。試合後はリングに“乱入”していた。リングサイドで写真を撮り続けたのが縁で77年に全女の専属になり、翌78年の正月からは毎日事務所に押しかけた。熱意が認められ、3月に卒業後は正式に社員になった。

 松永4兄弟から興行のイロハを学び、企画広報部長に昇進。3年連続で武道館大会を開催(77~79年)したビューティ・ペア。80年代のクラッシュ・ギャルズはマネジャーも務め、二人三脚でステップアップした青春の同志でもあった。東京ドームに初進出(94年11月)した対抗戦時代は、各団体の窓口になって夢のカードをプロデュースした。

 スターダムの躍進でブッカー&マッチメーカーの手腕は世界でも評価は高く、21年度レスリング・オブザーバー大賞のベスト・ブッカー部門2位に入っている。それも歴史的なムーブメントに直接かかわった全女20年間の体験が原点であり財産になっている。

 96年に団体として年間最多52万人の観客動員を記録した全女も、97年に経営が悪化。40歳の夏に退社して独立した。98年2月にアルシオンを旗揚げしたものの経営不振で03年6月に活動停止。選手の受け入れ団体としてAtoZを用意したが、A=アルシオンとZ=全女出身選手の融合は空転。06年5月に解散を余儀なくされた。自ら興した理想の団体が崩壊すると、経営者としての辛苦を味わった。道場閉鎖で住居を失い、キャンピングカーの車上生活も体験した。

 その後はJDスター(格闘美)の外部スタッフとなり、07年7月に解散後はフリーになった風香をサポートして風香祭(07年9月旗揚げ)を運営。その風香も10年3月に引退した。同時期に芸能プロダクションから依頼され、グラビア・アイドルの愛川ゆず季のプロレス・デビューに着手。10年10月にゆずポン祭を旗揚げした。ゆずポンを指導したのは後にGMとなる風香で、ファンも合流した“練習教室”がスターダムの原点となった。

 スターダムはゆずポンがブレークし、13年に初進出した両国国技館大会で引退後は紫雷イオがバトンを受け取った。15年2月、世IV虎-安川惡斗の紛糾マッチでピンチを招いたが、イオ&岩谷麻優&宝城カイリの“スリーダム時代”を構築して乗り切った。

 また選手脱退の窮地を逆手に取った外国人選手導入策も活性化をもたらした。同団体はこれまで16カ国・地域から米国の36人を筆頭に計89人の外国人選手を招へいしている。トニー・ストーム、シェイナ・ベイズラー、ドゥドロップ(バイパー)、ケイ・リー・レイ、ブレア・ダベンポート(ビー・プレストリー)、ジェイミー・ヘイターらはWWE、AEW、NXT・UKで活躍している。カイリ(17年)、イオ(18年)をWWEに送り出しても団体のパワーは衰えなかった。

 60歳になった17年は都内のホテルで還暦パーティーが開かれ、200人を超えるOG、関係者に“復活”を祝福された。内外の女子選手から「お父さん」と慕われ、リスペクトされている。かつては覆面マネ&レスラーとして“戦う指揮官”に変身したこともあった。

 “女子プロレスの父”松永高司会長(享年73)が天国に旅立ってから13年になる。全女イズムの薫陶を受けた小川EPは、旬を見逃さずに選手を抜てきする手法などを駆使し、10年がかりで極上の“スターダム・テイスト”を作り上げてきた。3月には新ブランド「NEW BLOOD」を立ち上げ、新世代の育成にも本腰を入れる。60代後半に入ると体力面の問題も出てくるが、チャレンジ魂は不滅。生涯現役は無理としても、次は古希(70歳)&50周年を目指す腹積もりだ。

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