【谷光利昭医師】「痔」…恥ずかしくても一度チェックを

 【Q】実は痔(じ)に悩んでいます。時々強く痛み、かゆみもあります。恥ずかしいので病院に行かずに治したいのですが…。(40代男性)

 【A】「痔」は身近な疾患ですが、場所が場所だけに診察に来られる方はそれほど多くないような気がします。実際、私も他人にお尻を見せることは躊躇(ちゅうちょ)します。多くの患者さんを診てきても、そう感じます。ただ、見せてもらわないと治療法が選択できません。なんとか“我慢”して一度は状態をちゃんと確認した方がいいです。

 単なる痔だと思って受診せずに、自己判断で市販の坐薬、軟膏で経過観察して来院したときには進行の直腸がんが見つかり、治療に難渋したという類の話はよく聞きます。

 また直腸がん以外にも、注意をしないといけない病気はたくさんあります。肛門管がん、痔瘻(ろう)がん、悪性黒色腫、パジェット病、ボーエン病…。悪性腫瘍以外の良性疾患も鑑別しないといけません。肛門ポリープ、直腸ポリープ、直腸脱、尖圭コンジローマ、肛門周囲膿瘍、アテロームなどです。聞いたことのない病気も多いと思います。これらには皮膚科、外科の先生と協力しあい治療方針を決めないといけないこともあります。ですから決して侮ってはいけないのです。

 痔は大きく分けると外痔核、内痔核、裂肛(切痔)と痔瘻に分けられます。一般的にイボ痔といわれているのは内痔核です。これが多くの患者さんを苦しめます。排便をしたときに必ず脱出したり出血したり、歩行しているだけ脱出してくるようであれば、手術の適応だと思われます。

 以前は、内痔核の程度がひどい場合は切除がほとんどでしたが、現在は局所麻酔で痔核に薬液を直接注入して切除した場合と同等か、それ以上の効果が得られる治療が存在します。手術以外にも漢方薬と軟膏の併用療法で、かなり改善するケースもあります。また、痔だと思い込み深刻な顔で来られた患者さんを診察すると単なる肛門の皮膚のたるみで、治療の必要が全くないことを説明することも多々あります。やはり恥ずかしくても、受診してから最善の治療方針を考えることが大切ですね。

 ◆谷光利昭(たにみつ・としあき) 兵庫県伊丹市・たにみつ内科院長。診察は内科、外科、胃腸科、肛門科など。デイリースポーツHPで医療コラム「町医者の独り言」を連載中。

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