胃カメラは苦しくない方がいいのでは

 「町医者の独り言・第2回」

 健康診断のシーズンです。みなさん、胃カメラ(「上部消化管内視鏡」が正式な名称ですが、あえて胃カメラとします)を受けられたことはありますか?以前は「胃がん大国」だった日本で、胃がんでの死因が減少した理由の一つに胃カメラの発展があります。以前は検診等でバリウムを飲んで、異常があった場合にのみ、胃カメラを施行していましたが、最近は最初から胃カメラをするケースが増えています。あくまでも私見ですが、胃カメラは、バリウムを飲む検査と比較するとかなりの精度で、早期胃がんやその他の病気を発見することが可能な検査だと考えています。ですから、友人、知人に「食道、胃、十二指腸の検査は何がいい?」と聞かれたときには、迷わず胃カメラを勧めています。

 唯一の難点は「苦しい」ということです。栃木がんセンターにいたころ、横で見ていて一番うまいと思った先生に胃カメラをしてもらいましたが、それでも苦しくて苦しくて…。こんな検査はもう受けたくないと思ったものです。それから数年後に、沈静下での胃カメラをルーチンでするようにしました。

 最近は鼻からカメラを通す経鼻内視鏡の出現で、比較的楽に検査が受けられるようになりましたが、それでも苦しい検査に変わりはありません。実は、私は最近まで経鼻内視鏡を受けた経験がなかったんです。先日、鎮静剤を使用せずに、友人の病院で経鼻内視鏡を受けてきましたが、鼻水、涙、嗚咽が止まらず、こんな検査は二度としたくないと思いました。(口からの胃カメラよりは、はるかに楽でしたが、辛かったです。友人がこのコラムを見ていないことを祈ります。来年もお願いしますね)

 私の医院には経鼻内視鏡は置いてありません。理由は、鎮静剤を使いますので、経鼻内視鏡よりも苦しくないからです。また、取らないといけないポリープがあった際には、そのまま切除をして縫合する処置をしますので、経鼻内視鏡は施行していません。鎮静剤を使うことにより、今まで敬遠していた検査を素直に受け入れる気持ちになる人がほとんどです。「こんなに楽に出来るなら最初からこの方法でしてほしかった」。このような感想をよく聞きます。

 「どうして大病院ではしてくれないの?」とよく質問されます。おそらく…手間暇がかかること、鎮静から覚める際のベッド等のスペースが取れないこと、胃カメラの際の介助の人数も増えること、検査1件の時間が長くなることなどが、主な理由だと思われます。鎮静剤を使用した上での胃カメラを経験してしまうと、いまだに多くの病院で鎮静剤を使わずに検査をしている現状を考えた時に不思議な感覚がありますが、それぞれの医院での事情もありますから一概には言えないです。

 沈静下の胃カメラの利点ばかりを書いてきましたが、欠点もあるんです。当日に自分で運転する乗り物に乗れないことと、逆行性の健忘があることです。当日は絶対に、乗り物を運転されないようにお願いします。死亡事故もあるようですから…。

 胃がんによる死亡率は年々減少していますが、早期発見、早期治療のおかげです。胃がんといっても早期に見つかれば、内視鏡のみでの治療が可能です。私も胃カメラを受ける前は、いつも緊張と不安で一杯ですが、色々な意味で臆することなく検査に臨んで頂きたいものです。

 ◆筆者プロフィール

 谷光利昭(たにみつ・としあき)たにみつ内科院長。1969年、大阪府生まれ。93年大阪医科大卒、外科医として三井記念病院、栃木県立がんセンターなどで勤務。06年に兵庫県伊丹市で「たにみつ内科」を開院。地域のホームドクターとして奮闘中。

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