【サッカー】柏 躍進の3つの理由 過去2シーズン残留争いも一転 大混戦Jリーグの台風の目に

 試合後、選手を祝福する柏のロドリゲス監督(中央)=8月31日
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 J1柏が大混戦のリーグで台風の目となっている。過去2シーズンは残留争いに巻き込まれるなど低迷していたが、リカルド・ロドリゲス新監督(51)の下、スタートした今季は、第28節を終えて首位と勝ち点1差の2位と大躍進。得点数は10試合を残す中、早くも昨季を上回っている。なぜ柏が急に力をつけ、“ダークホース”となっているのか。このほど取材に応じた布部陽功フットボールダイレクター(FD、51)の言葉からひもとくと、大きく三つの要因が見えてきた。

 【1】攻撃的サッカーをやり切る

 ここまでの戦いぶりの評価を問われた布部FDはうなずきながら、こう言葉にした。「いい数字、悪くない数字だと思います。(躍進は)想定以上」

 今季からボールを保持し、主導権を握るポゼッションサッカーを志向。3バックの両脇も果敢に攻撃参加し、相手陣で柏の選手たちが縦横無尽にボールを回して守備網を崩し切る。ここまで平均ボール支配率、平均チャンスクリエイト数はリーグ1位で「やりたいサッカーが、ほぼできている」と充実感を漂わせた。

 最初の要因は“迷い”を消したことだ。過去2年も初めは攻撃的スタイルを目指したが、シーズン途中から残留が現実的な目標となり、勝ち点を拾っていくため堅守速攻の方針に変えざるを得なかった。だが、布部FDはこれらの反省から「今季はとにかくやり続ける」と決断。今後の柏レイソルのアイデンティティー、軸を明確にした。

 【2】新スタイルにマッチした指揮官

 そして、J2徳島、J1浦和で攻撃的なサッカーを志向していたロドリゲス監督に白羽の矢を立てた。布部FDは17年、J2だった京都の監督時代に徳島と対戦経験があり「自分がやりたいサッカーを見せられた」と、脳裏に焼き付いていた記憶も招聘(しょうへい)を後押ししたという。

 オファーの段階ではJ1残留が不透明だったが、ロドリゲス氏は「J2でもやる」と新たなビジョンに共感。布部FDも「どんなことがあっても、あなたのサッカーを貫いて」と勝敗ではなく内容で評価すると約束した。新スタイルの実現を可能にする人選がハマったのが二つ目の要因だ。

 【3】的確&大胆な補強

 「新しいレイソルを作るときに中途半端じゃダメだと思った」と布部FD。オフに14人もの新加入選手を迎え、かつてロドリゲス監督の下でプレーした選手も複数名を連ねた。その覚悟は実る。8月31日の福岡戦では先発11人中、日本代表MF久保藤次郎ら7人が途中加入も含めた新戦力だ。さらにバランスの取れたスカッドが競争を生み「誰が出ても活躍できる」と、チーム力の底上げにも成功した。

 新スタイル構築の道半ばながら、14年ぶりVが射程圏内となっている。コーチとしてクラブの栄冠を知る布部FDは終盤戦に向けて、必要な要素を二つ挙げた。「エナジー・熱量をどれだけ高いところまで出せるか。あとは“質”が上がってくれば、僕は優勝できると思っています」。“まだ半分”という理想のサッカーが完成を迎えた時、柏が頂点に立つ。(デイリースポーツ・松田和城)

 ◆近年の柏 22年は、11年にJ1優勝へ導いたネルシーニョ監督の下、7位と健闘するも、23年はスタートダッシュに失敗し、5月に井原正巳監督が就任。残留争いに巻き込まれたが、17位で降格を回避し、天皇杯は準優勝だった。24年も中盤から低空飛行が続き、最終節で敗れながらも残留を決めた。得失点は、23年は34試合で33得点47失点。24年は38試合で39得点51失点。過去2年とも得点はリーグで2番目に少なく、攻撃力が課題だった。

 ◇布部陽功(ぬのべ・たかのり) 1973年9月23日生まれ、51歳。大阪府出身。現役時代はV川崎、磐田、神戸、C大阪、福岡でプレー。FW、MF、DF全てのポジションを経験した。Jリーグ通算344試合28得点。09年に現役引退後、福岡のアンバサダー兼コーチを経て、10年に柏のコーチに就任。翌年、Jリーグ初となるJ1昇格1年目でのリーグ優勝に貢献した。17年から当時J2の京都で指揮を執り、18年5月に退任。同年11月からゼネラルマネジャーとして柏に復帰した。現在はクラブの強化責任者にあたるフットボールダイレクターを担う。

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