【スポーツ】なぜ?バドミントン元世界王者の桃田賢斗は指導者としてもトップレベル 現日本代表の渡辺航貴が明かしたすごさ 目からウロコの連続
バドミントン男子シングルス元世界王者で、4月から選手兼コーチとして活動している桃田賢斗(31)=NTT東日本=が、指導者としても存在感を発揮している。そのコーチング力の高さを現・男子日本代表の渡辺航貴(26)=BIPROGY=が明かした。
目からウロコの連続だった。渡辺は今季、かねて交流のある桃田が選手兼コーチを務めるNTT東日本に出稽古した。そこでは、常に世界と戦うことを念頭に置いた指導を受けたという。
練習は世界ランク1位の石宇奇(中国)を意識したもの。桃田は「後ろのつなぎはどうにでもなる。でも前のステップは遅いだけで世界との差が広がる。石宇奇は緩めに短い球を出してくるから、体が自分の前に出過ぎると打たれるし、足から出してリズムよくいかないといけない」と狙いと意図を明確に説明し、ネット前のさばき方の助言をしてくれた。
メニューはコートの左右の端ギリギリまで足を伸ばして、ひたすらシャトルを拾い続ける内容。あまりにハードなテンポの速さに、思わず「速すぎない?きつすぎない?」と聞いたが、桃田からは「俺はその意識でやっていたよ。これについてこないと話にならない」と返ってきたという。世界トップと戦うために必要な練習の質の高さと、そこで桃田が戦っていた事実に気付かされた。渡辺は「世界(レベル)の対策が多かった。すごいためになったし、もっとやらないといけない」と刺激を受けたという。
さらに桃田の指導で印象に残ったのが、目の付け所の細かさ。「全体じゃなくて、もっと細かく見ている」と戦術や体の動きではなく、相手が球を待つときの自身の足の幅を指摘された。助言通りに足の幅を意識すると、プレー一つ一つの初動が速くなった。コーチングはプレースタイルによって取り入れにくい場合もあるが、桃田の指導にはそれが一切ない。渡辺は「いろんな人からアドバイスを受けていて、テンポ感が合う合わないとかがあるけど、桃田のはない。打ちやすい!戻りやすい!動きやすい!ってなる」と絶賛した。
7月のジャパンオープンで自身初の4強に入るなど男子シングルスで存在感を発揮しつつある渡辺。「小さくても世界と戦えることを見せたい」と自信を持って宣言できるのも、充実した練習を積めているからだろう。そこには「勝手に自信がつく。桃田教みたいな感じです」と例える桃田の高い指導力が影響を与えていることは間違いなさそうだ。18年から2年連続で世界選手権を制し、男子シングルスを切り開いてきた日本のエースは、指導者としてもトップレベルだった。(デイリースポーツ・谷凌弥)
◆渡辺航貴(わたなべ・こうき)1999年1月29日、埼玉県出身。埼玉栄中から同高校に進学し、卒業後は日本ユニシス(現BIPROGY)に入社。23年のスイスオープンでワールドツアー初優勝。同年の全日本総合選手権では準優勝した。24年10月にはデンマークオープンで2位。同12月には日本ランキング1位に立ち、25年のジャパンオープンで過去最高位となる4強。同年の世界選手権代表。167センチ、右利き。




