【野球】広島・新井監督“塹江イジリ”の理由 「勝負の世界だけどエンタメ」
広島のキャンプ第1クールでは、新井貴浩監督(48)が頻繁に塹江敦哉投手(27)の名前を挙げていた。左腕は中継ぎが主戦場だが、初日に開幕投手を問われると「塹江です」と満面の笑み。6日の第1クール最終日も、テレビ会見で目立った選手に「やっぱ塹江さんですかね」と笑った。指揮官の“塹江イジリ”の真相に迫ってみた。
当意即妙な言葉選びは健在だった。6日、新井監督は投打で目立った選手を問われ「あえて1人だけ挙げるなら、やっぱり塹江さんですかね!」と、にこやかな表情。これには伏線がある。
2月1日、開幕投手の話題で「塹江です」と返答した。事実上は大瀬良、床田、森下による争いが続いており、完全なジョーク。3月28日の開幕戦で対戦する阪神・藤川監督がテレビ出演で、広島の開幕投手発表を促している件を振られても「塹江だって!本人もその気になっている。塹江です!」と真顔で話した。
そして6日の会見。「私は聞いてないのですが彼(塹江)の方から『順調です』と言ってきたんです。『え、何が?』って。ちょっと意味が分からなかったです(笑)」とおどけた。
塹江の名前を連呼する真意が気になって新井監督に尋ねた。「彼のレスポンスが面白いからね。彼は進学校の高松北高校出身で頭もいいので、そういう(ウイットに富んだ)やりとりができる」と教えてくれた。初日に“開幕投手指名”を受けた塹江も指揮官に負けじ?と「両親が楽しみにしているので、しっかり開幕に向けて頑張りたい」とユニークに呼応した。
塹江は今キャンプで順調な仕上がりを見せている。6日に初めてシート打撃に登板し、21球。打者5人を1安打に封じて存在感を発揮した。5日に視察に訪れた侍ジャパン・井端監督も「秋も強化試合があるので、そこで森浦投手や塹江投手とか、その辺が入ってきてくれたら」と高評価を口にしていた。
23年は8試合の登板にとどまり、同年の秋季キャンプで新井監督ら首脳陣からの提案でサイドスローに転向。昨春キャンプでアピールした際には指揮官から「過信に満ちている」と独特の言い回しで称賛された。フォーム変更が奏功して昨季は53試合で2勝0敗、防御率1・58。今や中継ぎ陣に欠かせない存在だ。
新井監督は「勝負の世界だけどエンターテインメントだからね」と“塹江イジリ”の意図を明かしつつ、プロ野球界の醍醐味(だいごみ)を口にした。「腕を下げて(新井監督に)きっかけをいただいた。努力を重ねて期待に応えられるように」と塹江。グラウンド内外での2人の信頼関係から今季も目が離せない。(デイリースポーツ広島担当・向 亮祐)
◆塹江 敦哉(ほりえ・あつや)1997年2月21日生まれ、27歳。香川県高松市出身。178センチ、91キロ。左投げ左打ち。投手。高松北中、同高を経て14年度ドラフト3位で広島入団。16年9月、巨人戦で1軍初登板。20年7月、DeNA戦でプロ初勝利を挙げた。24年からはサイドスローに転向。自己最多の53試合に登板し、防御率1・58の好成績を残した。





