【野球】有原式?上沢式?ポスティング後に短期間で他球団移籍 古巣に旨味のない抜け道を塞ぐにはどうすればよいのか
都内のホテルで20日に行われた12球団監督会議で、日本ハム・新庄監督がポスティングシステムを利用してのメジャー挑戦から1年で帰国を選び、古巣の日本ハムではなく、同一リーグのライバルであるソフトバンクへの移籍を決断した上沢直之投手に関して改めて私見を述べた。
新庄監督は8日にも上沢に関して「ああいう決断をされたのはすごく悲しい」と本音を漏らしていたが、この日は「ポスティングで行って1年ダメで、ソフトバンクに行くという、この流れをやめてほしいというのは言いました。だってめちゃめちゃ強くなるじゃない?面白くなくないですか?それは良くないかなということは言いました。誰に何と言われようが、プロ野球に良くないことを言っただけ。その流れは良くないですね」と語った。
上沢は2023年オフにポスティングシステムを利用してメジャーに挑戦。レイズとマイナー契約を交わし、その後、レッドソックスに移籍したが、登板はわずか2試合。右肘痛も重なって日本球界復帰を決断する中で日本ハムも獲得に手を挙げたが、条件面で古巣を上回ったとされるソフトバンク入団を決めた。
新庄監督は個人名を挙げながら、「有原君、上沢君、もし青柳君、小笠原君、佐々木君にしてもトラブルがあったり、活躍できなくてクビ切られましたとなったら、(他球団は)間違いなく欲しい、欲しくなる。そこにソフトバンクに行ってしまう流れは作ってほしくないかなと」と繰り返し強調し、今オフにポスティングシステムを利用した他球団選手にも触れた。
元日本ハムの有原は20年オフにポスティングでメジャーに挑戦し、レンジャーズに2年在籍した後、23年からソフトバンクに移籍した。日本ハムには約1億3000万円の譲渡金が支払われたが、当時、ファンを中心に「有原式FA」というフレーズが広まった。上沢の場合、譲渡金が約95万円と低く、日本ハムへの見返りが少なかったこともあり、有原以上に反発の声は大きく、同様に「上沢式」という言葉がネットを中心に飛び交った。
ポスティング利用後の明確なルールが定められていないため、有原にしても上沢にしても、反感は買ったとしてもルール違反ではない。では、どういった環境整備が望まれているのだろうか。
新庄監督は「(ポスティングで)行って帰ってきて(古巣で)1年やってからじゃない?最低1年がいいですね。1年でいいと思う。1年向こう行ってダメで、さあ違う球団となると、監督の立場からすると『は?』となります」と偽らざる思いをぶつけた。
また、阪神OBの中田良弘氏は「日本に戻る理由が何であったにしても、ポスティングから3年経過していない選手は古巣に戻らなければならないというようなルールが必要だね」と持論を述べ、ルール整備に関しても「現場の意見を聞いてあげてほしい。ポスティングを認めるのは球団であっても、選手を失って一番痛いのは現場だからね」と要望した。
かつて阪神の井川が2004年オフにポスティングを要望した際、当時の中日・落合監督は「ポスティングってのは、球団の許可と了解がなきゃ無理なんだろ。どうしてもメジャーに行きたいって言うんだったら、阪神からもらった契約金から何から何までのお金の全部を返してから行けっていうんだ。それじゃなきゃ筋が通らんだろ」との考えを熱く語っていた。
来オフには、球団から2025年終了時のポスティングを容認されているヤクルト・村上が海を渡る可能性が高い。そのほかにもポスティングでのメジャー挑戦を求める選手が現れることも考えられる。選手の夢を叶えるために背中を押した球団の思いが、1年後、2年後に結果として裏切られるような形になるのは複雑だ。現状、ポスティングには選手サイドのわがままと映る部分もあり、誰もが納得できるシステムが構築されれば、後ろ指を差される選手も少なくなるはずだ。(デイリースポーツ・鈴木健一)