【野球】阪神・岡田監督の正力松太郎賞受賞で忘れられないシーン 四球で雄たけびをあげた大山 山本浩二氏も「素晴らしいこと」

 阪神・岡田彰布監督が14日、正力松太郎賞に選出された。選出理由の中でキーワードとなったのが「四球」。リーグトップとなる494四球が評価され、座長を務める山本浩二氏も「フォアボールを重視した。最近ではあまりないんじゃないかと。1年通してやったのは素晴らしいことじゃないか」と岡田監督の手腕を評価した。

 その四球を振り返る上でどうしても忘れられないシーンがある。5月25日、神宮球場で行われたヤクルト戦だ。同点の延長十回、2死満塁で大山が打席に入った。当然4番として、打って決めたい気持ちもあったかもしれない。だが初球の厳しいボールをしっかり見極めると、3球目はインハイにすっぽ抜け打席内に倒れ込んでよけた。

 スタンドからわき起こるブーイング。一瞬、大丈夫か?と思ったが大山はすぐ立ち上がり、打席に入った。投手に心を整理させる時間を与えないかのように、即座にバットを構えた。そして4球目がストライクゾーンから外れると、すぐさま三塁ベンチを振り返り、右手で拳を握って雄たけびをあげた。

 どちらかと言えば寡黙で、常に全力プレーを欠かさないという印象だった大山。そんな選手が気迫を前面に出して押し出し四球をもぎ取った。その姿勢を見ていた佐藤輝が「押し出しで1点。大山さんが選んでくれたので、すごい楽な気持ちで打席に入れました」と一気にたたみかける。四球の後の初球を狙えという“セオリー”を実践するようにファーストストライクをフルスイング。空振りとなったが、最後は追い込まれながらも左中間を真っ二つに破る3点二塁打でダメ押しした。

 大山が我慢して四球を選んだことで、佐藤輝のプレッシャーを和らげた。押し出しとはいえ、4番が四球を選んで気迫を前面に出す。だからこそ18年ぶりのリーグ優勝、そして38年ぶりの日本一を達成するチームへと成熟したのではないだろうかと思う。

 岡田監督は昨オフの時点で「このチームの4番は大山にせなあかん。みんなの見てる姿とかを見てるとな。やっぱり違うやんか」と語っていた。大山が献身的に四球を選ぶ姿勢を見せることで、チーム全体に波及する。そして意思が統一される。

 査定方法の変更などがこれまでも語られてきたが、要因の一つとして欠かせないのが4番の姿。そして波及効果を考えて、背番号3を4番に据えた岡田監督の眼力。今オフ、日本ハム、中日などで四球数の増加を改善ポイントとして指摘する声も上がっている。球界を変えた岡田野球。長い歴史を誇るプロ野球界に新たな風を吹き込んだことを考えても、正力松太郎賞に値する指揮官、そしてチームだったように思う。(デイリースポーツ・重松健三)

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