【野球】阪神・岡田監督が初めて漂わせた優勝への匂い 野球観を共有した選手をたたえた異例の言葉

 18年ぶりのリーグ優勝に突き進む岡田阪神が、着陸態勢に入ろうとしている。8日に甲子園球場で行われた広島戦に4対1で快勝し、貯金を今季最多の31とした。2位チームとの直接対決を制したことで優勝マジックは2個減って10となった。いよいよカウントダウンが始まる。

 今季5度目の5連勝で迎えた2位・広島との3連戦初戦。試合前時点で8ゲーム差。残り試合数を考えれば圧倒的有利な状況を数字が示していたが、仮に3連敗を喫することがあれば一気に5ゲーム差に縮まるとあって、気は抜けない一戦だった。

 横綱相撲だった。心配は杞憂に終わった。点差以上に強さを感じた。4万2638人のファンに見守られた安心感もあったが、点の取り方、抑え方、全てが完璧だった。これが優勝するチームという試合展開を理想通りに描くことができた。

 初回、ドラフト1位の森下が左越えに先制の10号ソロ。今季2戦2敗。対戦防御率0・56と苦しめられてきた広島・床田の出はなをくじく一撃。球団新人の右打者では1980年の岡田彰布以来、43年ぶりとなる2桁本塁打となった。

 二回には佐藤輝がバックスクリーンに18号ソロ。左腕に立ち直るきっかけを与えない見事な放物線だった。これで今季の甲子園本塁打を2桁の10本に乗せ、球団生え抜きの左打者では1985年の掛布雅之以来38年ぶり、ラッキーゾーン撤去後では初となる快挙を刻んだ。

 投げては今季、彗星のごとく現れた村上が、自身初の2桁勝利が懸かったマウンドという雰囲気を感じさせない軽やかな投げっぷりで、序盤から広島打線に満足なスイングを許さなかった。初のシーズン完走を目指す立場にも関わらず、真っすぐの勢い、キレは全く失われておらず、坂本のミットが心地よい音を奏でた。八回に代打・松山の適時二塁打で1点こそ失ったが、八回途中を6安打1失点。25歳右腕の堂々たるピッチングだった。

 失点直後の攻撃が勝機を高め、広島の反撃意欲をそいだ。先頭の近本が四球。中野が空振り三振。続く島田がスリーバントを失敗して流れが悪くなりかけた場面。ここでここまで3打数無安打だった4番・大山が三塁線を破る適時二塁打。広島の攻撃は残り1イニングとはいえ、失点直後の攻撃を無得点に抑えられていれば、2番・野間から始まる最終回の攻防はどうなっていたか分からない。大山の今季65打点目は、1打点以上の価値を伴って輝いた。

 岡田監督の試合後の発言がこれまでと変化していた。「いやいや、たいしたもんと思うよ。浮かれたとかいうのがなくて。これは地道にな、2月から俺が監督に代わって、やることというか、そういうのの積み重ねで勝ち星を重ねたから。まあ普段通りというか、普通通りやればいい結果出るという、そういう平常心というかな。自分らの野球をしたら、というのが何か見えるよな」と語った。明らかに優勝を意識した発言であり、岡田野球、岡田イズムの浸透度が、ある程度納得できる水準に達したことを認めるのと同時に、選手達の成長と奮闘を手放しでたたえた。

 この3連戦前、岡田監督は「3連敗だけ絶対せんように」と語っていた。それが優勝に向けた絶対条件だった。「自分らで幸せな試合ができるように持ってきたんやからのう。だから継続してやればええだけや」。手応えは確信に変わる。

 最大13ゲーム差をひっくり返された2008年から15年。あの悪夢を味わったからこそ今がある。歓喜の瞬間は間もなく訪れる。「おーん。もうちょっとゆっくり楽しめるやんか。ゆっくりと」。もう心配はいらない。岡田監督の表情が雄弁に語っていた。(デイリースポーツ・鈴木健一)

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