１８歳のルーキーがファームをざわつかせている。阪神のドラフト３位・井坪陽生（ひなせ）外野手（１８）＝関東第一＝は開幕から好調を維持し、現在ウエスタン１９試合で打率・３３３（６０打数２０安打）。高卒１年目ながらウエスタン１位に君臨している。気になるのが独特な打撃フォーム。「しっくりきてます」と好調のカギとなっているよう。安打を量産し、数字を残し続ける秘密に迫った。

　元々、フォームはよく変えるタイプだという。「高校の時は何回も変えてる。大会の打席の中でも変えたりしてて。定まったことはなかったです」。プロ野球選手などの動画を参考に、まねから入り、そこから自己流にアレンジしてきた。

　「一般的な、足を上げるのが苦手なんで、バットを動かしてタイミングを取ろうと思って。（巨人の）丸さんとか（元阪神の）金本さんとか結構バットを動かすんで、動画を見たり」と、これまで試行錯誤を重ねてきた。

　しかし丸のフォームはバットの動きが大きく、フィットせず。金本知憲氏のフォームに、ヒッチ（スイング前にグリップを下に動かす）を入れて試したがそれも合わなかった。ただ、ヒッチには手応えを得て自分の形に変え、今も取り入れているが、高校時代と、今のフォームの違いは「全部です。本当に全部です」と話す。

　「金属（バット）は衝突で（ボールが）飛んでいくんでフォームはあんまり関係ないんですけど、木製はスイングの軌道や出し方で全然飛距離が変わってくる」とプロ入り後は特にフォームの重要性を感じている。

　バットのヘッドを動かしてタイミングを取っているが、プロの速いボールにも対応できるよう、春季キャンプ頃からその動きを徐々に小さくした。「自分の感覚の中だけで変わってるんで、外からはあんまりわからないと思いますけど」と細かい工夫を凝らしている。

　なぜ独特なフォームで数字を残せるのか。まずポイントに挙げたのが「左肩」だ。

　「どのフォームでも唯一変わってないのは、左肩が結構入ること。そこが一番（球を）見やすい。くるっと回れるんでインコースも苦じゃない」

　次に挙げたのが「右肘」。「右肘が背中より後ろに出る。力が入るんで」と利点を明かした。打つポイントが体に近いのも特徴で「そこが元々自分のポイント。逆方向にも持っていけるし、引っ張りにもいける。自分は前にポイントをおけないんで。近い方が打ちやすい」と話す。

　これは選球眼にも直結する。「ポイントを前にすると、自分は体が開いちゃうんで、ボールがどんどん遠くなって、ボール球に手が出てしまう」と分析。体に近くするとボールを見る時間が長くなり、変化球の見極めもしやすくなるという。「ボール球を振らない」と選球眼は和田２軍監督のお墨付きだ。

　打席では常に「初球から振ること」を意識。「一球も無駄にしないように」と初球から積極的に振ることを心がけ、タイミングを合わせている。現在は監督やコーチ陣からフォームを変えるように言われることはなく「自由にやらせてもらってる」という。本人も、好調な間はフォームを変えない考えだ。

　打撃が好調な中でも、課題も口にした。「スライダーとかフォークとか、低めの速い変化球をもう少し見極められるように」とさらに選球眼を磨く。

　打撃だけでなく、守備、走塁にも日々奮闘中。工藤２軍外野守備走塁コーチと二人三脚で取り組み、守備は「スタートがよくなってきてる」と成長を実感。一番の課題は走塁で「高校時代、盗塁をやってこなかったので」と技術、スピードの向上を図る。打球判断やスタートなど初歩的な練習に加え、瞬発系のウエートトレーニングも導入中だ。

　「打つだけの選手になってほしくない」と２軍指揮官の期待も大きい。唯一無二のフォームで打ちまくり、守って走れる外野手を目指していく。（デイリースポーツ・山村菜々子）

　【井坪陽生アラカルト】

　◆生まれ　２００５年３月１７日の１８歳。東京都八王子市出身

　◆サイズ　１７７センチ、８６キロ

　◆投打　右投げ右打ち

　◆名前の由来　「太陽のように明るく元気に世を照らす存在になって欲しい」という両親の願いから

　◆家族構成　父、母、姉、兄

　◆球歴　４歳から八王子リトルで野球を始め、七国中では八王子シニアに所属。３年時にＵ１５日本代表に選出。関東第一では１年秋からベンチ入り。甲子園出場はなし。高校通算３２本塁打。高校の公式戦通算５９打数で１三振と「三振しない男」だった。５０メートル走６秒０。遠投１０１メートル

　◆登場曲　ＦＵＮＫＹ　ＭＯＮＫＥＹ　ＢＡＢＹＳ「太陽おどり　～新八王子音頭～」

　◆憧れの選手　楽天・浅村、巨人・中島。幼少期から西武ファン

　◆対戦したい投手　オリックス・山本由伸

　◆好きな食べ物　伊勢エビ。お寿司

　◆会いたい人　ＴＷＩＣＥ・ジョンヨン

　◆休日の過ごし方　目覚ましをかけずに寝る