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【野球】ヤンチャだった元巨人選手が野球スクール開校「失敗者」だからこそ伝えられること

 失敗は終わりではなく、自らを変えるチャンスにもなる-。プロ野球の近鉄、巨人でプレーした中浜裕之氏(43)。楽天イーグルスアカデミーで12年間のコーチ経験を経て、9月1日から宮城・仙台市内で「ドリームベースボール」という個別指導がメインの野球スクールを立ち上げ、新たな挑戦を始めた。

 「東北の野球のレベルを上げたいですね。一生懸命に頑張っている子供たちが夢や目標にもっと近づけるようにという思いです」

 中浜氏は、仙台育英時代に春夏合計3度の甲子園出場。当時を「生意気な問題児でした」と振り返るが、96年ドラフト4位で近鉄に入団し、02年オフに巨人に移籍。巨人時代の中浜氏も、確かにヤンチャな印象だった。

 プロでは9年間で1軍出場わずか8試合。その後は社会人チームなどに所属し、07年に都市対抗野球にも出場したが、プロへの復帰はかなわなかった。

 転機は08年の楽天のアカデミーコーチ就任。子供たちへの指導が中浜氏を変えていく。例えばデモンストレーションで本塁打を打とうにも、軟式球に手こずり柵を越えない。ならばと一から軟式球の打ち方を学び、練習する。指導へ必要なことは貪欲に取り組んだ。

 「どれだけ子供たちがわかりやすく、理論的に説明できるか。頭ごなしに指示しても子供たちは理解できない。理解できなければやろうとはしないので」

 見いだした指導方針はシンプル。「子供たちは楽しいから野球をやる。それを継続させるためのコーチ。楽しくないと次に進めないですからね」。子供たちの長所を褒める。個々に応じて適切な言葉を選ぶ。時に冗談を言い合う。小さな積み重ねを12年間、大事にしてきたという。

 「子供たちに変化が見られた時が一番うれしい」。ただ、喜びと同時に厳しい現実も知る。指導者からの暴言などで小中学生が競技から離れてしまうという現実。同じ世界にいれば、そんな話が頻繁に耳に入ってきた。

 将来の夢を「僕は子供たちに諦めないでほしいんです。これから絶対に挫折はある。その時に諦めないでやれる子を育てたい。それは人生もそうですから」と話した。将来のプロ野球選手を育てる-ではなく、困難でも諦めない子を。中浜氏らしい夢だと感じた。

 自らを「失敗者」と言う中浜氏。プロ時代は不遜な態度を表に出すことも、コーチと衝突することもあった。未熟さ故のヤンチャが成功を妨げた。それでも「失敗からいろいろなことを考え、成長できた。僕だから伝えていけることもあると思うんです」と話す。

 現役時代と違い、楽天のアカデミーコーチになって以降は街で飲み歩くこともなくなった。子供たちを指導するには、大人たちの信頼も得ないといけない。それは指導法だけでなく私生活でも…だ。

 「性格はなかなか変えられないですが、考え方は変えられる。僕を慕って来てくれる子供たちがいる。彼らのことを考えたら、自然とそうなりましたね」

 「ドリーム-」では小学2年生から中学3年生を対象に、1クラス定員3人の少人数制で指導は行われる。小中学生の野球人口減少。その原因の1つは競技の継続性だ。宮城県で数少ない、こうしたスクールが子供たちの競技離れの歯止めとなるのかもしれない。

 「失敗者」だからこそ子供たちに寄り添い、伝えられることがある。遠くない未来、その思いが結実し、東北に素晴らしい野球人が育つことを期待したい。(デイリースポーツ・中田康博)

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