【競馬】もっと称賛されるべき“鉄人”幸の史上最速2万回騎乗

 幸英明
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 2019年の日本競馬を振り返る上で、個人的に、もっと称賛されていいと感じる記録がある。8日に行われた阪神11R・阪神JFのジェラペッシュ(牝2歳、美浦・尾関知人厩舎)で、史上最速となるJRA通算2万回騎乗を達成した幸英明騎手(43)=栗東・フリー=だ。

 デビューから25年9カ月4日、43歳10カ月27日での快挙。従来の武豊騎手(50)=栗東・フリー=が持つ記録(デビューから29年6カ月4日、47歳5カ月21日)を大幅に更新した。名手も「すごいよね」と舌を巻くほどの金字塔だが、当の幸は「豊さんは海外を拠点にされている時期もありましたから。そうじゃなければまた違っていたと思います」と冷静に受け止めていた。

 1年で平均約770回の乗り鞍を確保し、それを四半世紀は続けないと達成できない数字。ちなみに19年で騎乗数が770回を超えたジョッキーがわずか5人しかいないと言えば、そのすごさが分かってもらえるだろうか。「勝ち鞍を挙げることはもちろんですが、乗り鞍はこだわっている数字ではあります。僕がアピールできるところですからね」とキッパリ。自分の“強み”は把握している。

 昨年11月に落馬。右肘開放粉砕骨折で一時は握力が3キロまで低下したが、懸命なリハビリで今年の2月頭に復帰した。当初は全治6カ月との診断だったが、周囲のサポートと驚異的な回復力で早期復帰を実現。「今年中に達成したかったというのはありましたね」。決して順風満帆なスタートではない中で節目の記録を達成。喜びもひとしおだろう。

 年明けに丸1カ月間、戦線離脱しながら、騎乗数は全体で6位となる762回を数える。「エージェントが頑張ってくれていますから」と謙そんするが、馬主や厩舎関係者から信頼を得ている証しだ。来月12日には44歳を迎える。ベテランと呼ばれる年齢になっても、精力的に調教に汗を流す姿は変わらない。継続は力なりという言葉を、日々の自らの姿で体現している。

 今後の目標を聞くと、「2万回に行くのにも年数がかかりましたし、正直、3万回という気持ちはないですね」と、率直に胸の内を明かす。「けがをせず、1つでも多く乗って、1つでも多く勝つ。そういう気持ちは常にあります。僕は人気のない馬に乗ることも多いですが、そういう時でも、少しでも上の着順に持っていって馬券に絡めたらと思います」。言葉に自然と力がこもる。

 JRA通算2万回騎乗達成の翌週には、JRA通算1400勝も記録。レース後、検量室前には、池添謙一騎手(40)=栗東・フリー=ら後輩が出迎え、ウイナーズサークルでは高田潤騎手(39)=栗東・フリー=がプラカードを持ち、たくさんのジョッキー仲間が駆けつけて祝福した。ファンや関係者から愛される“競馬界の鉄人”。2020年も、その姿が数多く見られることを楽しみにしている。(デイリースポーツ・大西修平)

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