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【野球】オリックス・張奕 ヒーローインタビューで流した涙のワケは

 オリックス・張奕
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 取材記者の心に響いた話を取り上げる「番記者の心」。8日・日本ハム戦(旭川)で、育成野手出身選手として初の勝利投手になったオリックスの張奕(ちょう・やく)投手(25)。プロ初先発に全く動じることはなかったが、ヒーローインタビューで思わず涙したそのワケとは-。

  ◇  ◇

 プロ初先発の張奕の投球は見事だった。MAX152キロの直球を軸に大きく割れるカーブ、落差の大きいフォークでどんどん追い込んでいった。

 四回まで日本ハム打線をパーフェクトに抑えた。五回先頭の近藤に安打を許したが、表情を変えることはなかった。淡々と後続を斬り、無失点で切り抜けた。六回に清宮に一発を打たれた後も同様だった。

 「ファームで投手コーチに“顔に出すな”と言われました。一球一球大事に抑えることだけを考えました」

 6回2安打1失点。これ以上ない投球でプロ初勝利。育成ドラフトで野手として入団し、勝利投手になる初の快挙を遂げた。

 試合後のヒーローインタビューは大雨の中。笑顔で「サイコーです!」と叫び。ウイニングボールを掲げてみせた。だが、記念球の行き先を問われ「家族にあげたい。今日は(台湾の)父の日なんで、台湾にいるお父さんにあげたい。あと、亡くなったおじいちゃんにも…」と言ったところで涙があふれた。家族、両親、2軍のコーチ陣など、たくさんの人々へ感謝の思いを口にした。中でも亡き祖父・張則切さんだけは特別だった。

 小学生のころから野球留学していた張奕。5年生のときに危篤の知らせを聞き、授業を抜け出して一人で台北から花蓮へ電車で帰った。病室に入ると、人工呼吸器を着けた祖父が横たわっていた。孫の到着を知ったのか、突然起き上がってバットスイングのマネをした。そして親指を立てた。そのあと静かに息を引き取った。

 「あの状態で、なぜあんなことができたのか。忘れられません。野球で壁にぶち当たるたびに思い出します」

 昨年6月、外野手から投手転向を言われたときも思い出した。

 「野手として通用しないということなんで悔しかった。でも、投手で頑張ってみようと思えたのは、おじいちゃんのおかげかも知れません」

 プロ入りから3年。一度も台湾には帰っていない。いとこの巨人・陽岱鋼から「簡単に帰れると思うな。プロ野球をなめるな」と言われたからだ。今年こそ結果を残して里帰りしたいと思っている。祖父の墓前に感謝の思いを伝えるために。(デイリースポーツ・達野淳司)

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