【野球】ソフトバンクの遅咲きのドラ1加治屋 前阪神の久保コーチの指導で飛躍

 遅咲きのドラフト1位。彼の存在がなければ、今季のソフトバンクはもっと苦しんでいたに違いない。

 5年目の加治屋蓮。今季は開幕直後から守護神サファテと「8回の男」岩崎翔が不在の戦いを強いられている。野球は投手力と言われるが、なかでも最近のプロ野球は『勝利の方程式』の力量がそのまま順位に反映されると言っても大げさではない。

 6月末時点で、チーム70試合中36試合(リーグ1位タイ)に登板。2勝0敗14ホールド、防御率1.62の成績を残している。

 まさしく大化けだ。社会人JR九州から入団するも一軍デビューまでに3年もかかり、昨季までの4年間での通算登板は4試合、防御率8.53の惨状だった。飛躍のワケを訊ねると、加治屋は1人のコーチの名前を挙げた。

「昨年秋のキャンプで、久保コーチに指導してもらい自分の中でフォームの迷いがなくなりました」

 久保康生2軍投手コーチ。昨季まで阪神2軍コーチを務め、今季からソフトバンクへ。「高校生(柳川商業)の時以来、41年ぶりに故郷の福岡に戻ってきました」。入団が決まると秋のキャンプからさっそく指導にあたった。いち早く目をつけたのが加治屋だった。「ファームで敵として見ていましたが、能力は高いのにもったいない投手だな、といつも感じていました」と振り返る。

 以前の加治屋の欠点は右腕が遅れすぎていたこと。体が前に突っ込みバランスを崩していた。それを改善する指導法は一見奇抜だった。まるで外国人投手のような投げ方を試させた。例えるならば元巨人のガリクソンのようなフォームだ。

 ただ、それがスタート地点だったと加治屋は振り返る。体が早めに開く悪癖が改善され、もともと150キロ級だった直球はシュート回転しなくなり、140キロ台の高速フォークもよく落ちるようになった。

 久保コーチは「ファームでもがいている選手は同じことをやっていてもダメ。自分の中で波紋を起こすような、大きなことに挑戦することも必要なんだよ」と持論を展開する。

 その名伯楽の指導法が若鷹投手の中でも最近評判がいい。なかでも大胆なフォーム変更に挑戦しているのが3年前のドラフト1位の高橋純平だ。

 素人目にも分かるほど試合毎に投げ方が変わることもあるが、6月21日の3軍韓国遠征の三星ライオンズ戦では9回5安打零封での完封勝利を飾った。さらに28日のウエスタン阪神戦(鳴尾浜)でも先発して4回無失点と好投を続けている。「もちろん力がある投手。1軍で2桁勝つ力も十分持っている」と久保コーチは笑顔になった。

 今年のパ・リーグはかなりの混戦模様。厳しい夏場の戦いを制するには、投手陣の整備がより必要になる。加治屋は連覇に向けたキーマンになること間違いなし。さらに高橋純のようなフレッシュな存在が台頭すれば、ソフトバンクは「もう1頂!」の実現へ大きく近づくはずだ。(デイリースポーツ特約記者・田尻耕太郎)

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