【スポーツ】異色の“癒し系王者”拳四朗

 異色の世界王者と言える。30日に行われたWBC世界ライトフライ級タイトルマッチで、王者の拳四朗(25)=BMB=が4回1分12秒TKOで挑戦者の同級11位ヒルベルト・ペドロサ(25)=パナマ=を退け、2度目の防衛を飾った。

 勝負を決定付けた4回の連打を、自身の名前の由来となった漫画「北斗の拳」の主人公ケンシロウの必殺技になぞらえ「あれ、実は『北斗百裂拳』です。パクっちゃいました」とおどけ、「皆さん見てますか。拳四朗でーす。名前覚えてくださーい」とダブルピースで茶目っ気たっぷりにアピールした。

 この試合は拳四朗にとって、3度目の世界戦で初の地上波生中継だった。これまでの2試合はWBA世界ミドル級王者・村田諒太(帝拳)とWBC世界フライ級王者・比嘉大吾(白井・具志堅)とのトリプル世界戦だったため、王座を奪取した5月の試合はハイライト映像のみ。初防衛に成功した10月に至っては、映像すら流れなかった(後日BSで放送)。それだけにモチベーションは最高潮に達し「インパクトを与えたい」と拳を握っていた。

 強さだけを追い求めている訳ではない。統一戦や強い相手との対戦について話を振られても「こだわりはないです。組まれた試合をやるだけ」と返し、それよりも「とりあえず有名になりたい。引退するまでに一生分稼ぎたい」とニコリと笑う。試合後には突然自身のスマートフォンを取り出し、インスタグラムとツイッターのフォロワー数をチェック。試合直後とあって200人程度しか増えておらず「えー、そんなもんかー」と肩を落とす姿は何ともほほえましい。

 23日に後楽園ホールで行われた全日本新人王決定戦を観戦した際には、ゲスト解説の前WBC世界バンタム級王者山中慎介と話し込んだ。偉大な元世界王者から“金言”を授かったのかと思いきや、山中が身に着けていた高級腕時計「オーデマ・ピゲ」に目がくぎ付けになったという。

 試合2日前の28日には都内で映画「オリエント急行殺人事件」を鑑賞し、「ねんりん家」大丸東京店限定の3種入りバウムクーヘンを行列に並んで購入するなど、どこまでもリラックスしていた。

 計量直後に高級焼肉弁当をほおばる姿がおなじみとなりつつあるが、同時に表参道の「ナチュラルハウス」で購入したというココナツウオーターも飲み干した。ココナツウオーターは“飲む点滴”とも言われ、多くの電解質やミネラルが含まれており、疲労を早期に回復させる作用もある。当然、体には細心の注意も払っている。

 悲壮感やハングリーという言葉からは相当遠い位置に立つ王者だが、戦う理由は人それぞれあっていい。童顔の優しい笑顔を見ていると、かつて米国で「Smiling Assassin(笑顔の暗殺者)」と呼ばれたプロゴルファー丸山茂樹を思い起こす。まだキャリア12戦。試合をこなし、防衛を重ねる度に強くなっていくことだろう。新時代の癒し系王者がボクシング人気の新たな火付け役になることを期待したい。(デイリースポーツ・山本直弘)

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