かぎしっぽの“猫駅長” 幸運招くと期待 長崎・道ノ尾駅 “勤務”は朝と夕

伸びをするネル。しっぽが特徴=長崎市
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 JR長崎本線の道ノ尾駅に、オスの野良猫が昨年11月ごろから居つくようになり、駅の利用客や近所の人たちに「ねこの駅長さん」としてかわいがられている。トビキジ柄のこの猫の名前は「ネル」。「よく寝るから」と本物の駅長の江頭一夫さん(63)が名付けた。どんな猫なのか会いに行ってきた。

 JR長崎駅から列車で約12分。JR道ノ尾駅は、長崎に原爆が投下され、長崎駅が消失した際、負傷者を救援する「救援列車」の起点となった場所として知られている。

 ネルは、昨年11月ごろ同駅に現れた。地域のボランティアが不妊去勢手術を施した地域猫。「はじめのころは、駅の近くの、捨ててある発泡スチロールや木箱で寝ていましたが、そのうち駅舎にやってくるようになったんです。そのときはちょうど寒くなる時期だったので、20代の女性がエサと一緒に市販のダンボール小屋をプレゼントしてくれました」と江頭さんは振り返る。

 当初はその小屋を駅舎の裏側に置いていた。だが、次第にダンボールがいたんできたため、江頭さんがダンボールにビニールをかぶせた防水仕様のしっかりとした小屋を手作り。ネルもお気に入りで、よくそこに入っていたそうだ。2カ月ほど前、木製の立派な小屋がファンからプレゼントされ、現在はその小屋を使っている。

 ネルはたいてい早朝と夕方は駅にいる。昼間は駅の周辺を探索したり、近くの茂みで昼寝をしたり。待合室に1台だけある自動券売機の前にデンといすわり、利用客が「ごめん、ちょっとどいてよ」とお願いしても、どかないこともよくあったという。

 毎日駅を利用し、ネルに「反射板付きの首輪をプレゼントした」という販売業の女性(43)は「私も猫を飼ってるんですが、ネルは猫をかわいがってくれる人がわかるみたい。ねこ嫌いな人には決して近づかないんですよ。私が夜10時半ごろ電車で帰ってきて、いないなと思って口笛を吹いたら、あっちの方からバーっと走ってくることもあります(笑)」と話す。

 「いつもなでてくれる女性が待合室で座っているのを見つけて、女性の膝の上にぴょんと飛びのることもあります。かわいがってくれる人には甘えんぼうなんですよ」と江頭さんも目を細める。

 そんな江頭さんは、これまで猫を飼ったことがないそうだが、ネルと出合ってからは猫好きになり、食事などの世話をしている。「基本的に野良猫なので、猫の駅長として売り出そうとかそんな気持ちはまったくなく、ネルの好きなように自由にさせています。地元のテレビや新聞で何度かとりあげられたため、たまに『猫駅長さんいますか?』とやってこられる方もいますが、昼間はどこかに行ってることが多く、『すみません、出張中なんですよ』と答えることが多いですね(笑)」。

 記者が取材に訪れた日も、朝7時半すぎに同駅に着いたときには、もう食事を済ませ、どこかに行ってしまったあとだった。それから駅にふらっと戻ってきたのは6時間後の13時すぎ。江頭さんにちらっと挨拶すると、またふらりとどこかへ出かけてしまった。

 よく見ると、ネルのしっぽはかぎしっぽ。長崎に多いと言われる尾曲がり猫だ。かぎしっぽの猫は、「しっぽが幸運をひっかける(招く)」と言われている。気ままな「猫駅長」だが、もし会うことができれば、いいことがあるかも。(デイリースポーツ特約記者 西松宏)

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