ホームオピニオンDオピニオンD

 文字サイズ

やしきたかじんさんの隠された出自とは

2014年9月9日

 壇上に立つ「ゆめいらんかね やしきたかじん伝」の著者・角岡伸彦氏=東京會舘

 壇上に立つ「ゆめいらんかね やしきたかじん伝」の著者・角岡伸彦氏=東京會舘

拡大写真はこちら

 選考委員のノンフィクション作家・高山文彦氏は「本当に残念でした!」とウイットに富んだ表現で労をねぎらいつつ、「在日韓国人2世(※将来を案じた父の配慮から日本人である母の籍に入ったため日本国籍。『家鋪』は母方の姓)のやしきたかじんという人物と彼を強大な力で抑えていた実父の、いわば『血と骨』の物語、それが描けていれば本賞の枠を飛び越えて、とてつもない傑作になっていただろう。取材を重ねて世の中に出していかれることを期待したい」と、ビートたけし主演、崔洋一監督で映画化された、梁石日(ヤン・ソギル)氏の自伝的小説「血と骨」にイメージを重ねた。角岡氏は「アニキ」と呼ぶ高山氏の言葉通り、応募後も数か月の取材を重ね加筆した。

 そんなやりとりを耳にしているうちに、79年頃の記憶がよみがえった。三十路になるかならないかのたかじんさんがMBSのヤンタン(関西在住の10代にとって“義務教育”のようなラジオ番組「ヤングタウン」の愛称。たかじんさんは83年までパーソナリティーを務めた)で、実父との確執を語っていたことを思い出したのだ。学生時代、新聞記者志望を父に告げた際、突き放すような敬語を交えて頭から全否定された場面を、たかじんさんは父の口調をまねて再現していた。青年期のルサンチマン(この場合は父という絶対者への憎悪であり、同時にそれは音楽を選んだ表現者にとって不可欠な要素、動機付けになったと思う)にあふれていたが、出自については全く触れられることはなかった。

 式後のパーティーで角岡氏に声を掛けた。神戸新聞時代の昔話もそこそこに、たかじんさんの出自について改めてうかがうと…。「周囲はそのことを知っていたが、最後まで公にされなかった。自身の番組で“在日”を取り上げた際、在日韓国人のパネラー(例えば前述の崔監督)を迎えたことがあり、その時、本人も名乗るチャンスはあったのに、できなかった」。だからこそ、“それ”を初めて書くプレッシャーと同氏は格闘した。

 では、なぜ、そこまで掘り下げたのか。それは「歌手としてのやしきたかじんを再評価したい」という思いからだったという。実はそれこそが本書の大きなテーマだ。出自にまで触れたのは、彼の「歌」に結びつく原点の1つとして描かねばならなかったからだろう。何よりも、本書のタイトル「ゆめいらんかね」は「家鋪隆仁」名義で自身が作曲し、キングレコードの「ベルウッド」レーベルから76年10月21日に発売されたデビュー・シングルの曲名である。同日発売のファースト・アルバム「TAKAJIN」の5曲目にも収録されており、当時、たかじんさんは27歳になったばかりだった。

 「ベルウッド」といえば、高田渡、はっぴいえんど~細野晴臣&大瀧詠一のソロ、あがた森魚、友川かずき(現カズキ)、遠藤賢司、三上寛…といった唯一無二の顔ぶれが群雄割拠した伝説のレーベル。後に「やっぱ好きやねん」「東京」といったヒット曲を飛ばし、政界にも影響を及ぼしたカリスマ司会者と彼らの音楽性は今でこそ交わる要素を全く感じさせないが、モハメド・アリとアントニオ猪木が日本武道館で戦ったあの年、「1976年のやしきたかじん」はその延長線上にいたシンガー・ソングライターだったのだ。

 角岡氏は言う。「9・11という日に本を出す。(01年の同時多発)テロとは全く関係ないですが、僕にとってはハラハラドキドキ。本人が隠してきたことを僕が書いてしまうことに怖い部分もあります。でも、それ(出自)をバネにして彼は歌手として頑張ったんですから」。果たして、たかじんさんの出自と歌のつながりとは…。こちらも覚悟をもって、本書を手に取りたい。

(デイリースポーツ・北村泰介)

前ページ123



インサイドニュース

  • 【野球】阪神・門別の現在地 3回6失点の巨人戦で得た教訓とは 先輩達の言葉を胸に再昇格目指す(5月28日)
  • 【野球】日本ハム・新庄監督 2年ぶり甲子園がい旋に思い「今年、最後かもしれんしね。オレが」(5月28日)
  • 【野球】西武ライオンズ再建に監督の外部招聘や外国人監督の就任は検討に値するのか(5月27日)
  • 【野球】なぜ西武・松井監督はわずか1年ちょっとで途中休養となったのか 逆転勝ちで連勝後に発表となったワケ 評論家が分析(5月27日)
  • 【野球】柴田恭兵72歳 美フォームからのストライク投球にファン騒然 草野球は「多いときに8チーム」専門家は「アスリートの筋肉」(5月26日)
  • 【スポーツ】なぜ石川祐希は国内リーグではなくセリエA王者のペルージャを選んだのか? 「貫きたい目標」とは(5月25日)
  • 【スポーツ】吉江豊さん、突然の死から2カ月…妻、兄が今、思うこととは(5月25日)
  • 【野球】阪神・岡田監督が語っていた勝負師の格言「絶対に動かなアカン」新井監督との采配勝負 首位攻防戦の分岐点に(5月24日)
  • 【野球】パ・リーグ異常事態のワケ 101勝ペースのソフトバンクと98敗ペースの西武 西武は球団史上最速で自力優勝の可能性が消滅(5月24日)
  • 【スポーツ】宇野昌磨さん「どん底」を救ったランビエルコーチとの物語 情熱的で「かけがえのない存在」になった理由(5月23日)
  • 【野球】なぜ侍J・井端監督はアマ球界からの選手招集に積極的なのか 「プレミア12」に向けブレない信念とは(5月22日)
  • 【野球】阪神・石井が三振を取れる理由 直球と変化球の相乗効果が生んだ飛躍的な増加(5月21日)
  • 【ファイト】全日本・青柳優馬 10周年で過酷な1日3シングルマッチを組んだワケ(5月20日)
  • 【野球】DeNA・筒香の野球人生支える打撃投手の存在 15年から変わらぬ絆と絶大な信頼(5月20日)
  • 【野球】マツダスタジアムに〝花道〟があるワケ ベンチからホームベースへ土の一本道 秋山&小園が教えてくれた(5月18日)
  • 【野球】ロッテの高卒2年目右腕・田中晴也の現在地「1日でも早く1軍へ」師匠・西野の言葉 野茂氏からの教えも胸に刻む(5月18日)
  • 【野球】阪神 岡田監督の起用はなぜ当たる?驚くべき観察眼&練習を見る場所 4番・原口が大当たり「普通やろそんなん、組み替えもクソも」(5月17日)
  • 【スポーツ】男子バレー・高橋藍がみせる進化「代表の軸になる」強い自覚が生まれた理由(5月17日)
  • 【野球】なぜ2軍落ちした阪神・佐藤輝には多くの苦言が集まるのか 評論家が指摘した今後の野球人生の歩み方(5月16日)
  • 【スポーツ】異例のブーイングも 8年ぶり「旗判定」復活の柔道全日本選手権 原点回帰で好勝負連発の一方で不明瞭さ拭えず(5月16日)
  • 【サッカー】J1川崎の礎を作った風間八宏氏は、なぜ関東リーグ1部の監督に就任したのか 名将を惹き付けた南葛SCの魅力(5月15日)
  • 【野球】援護がないという言い訳は 時空を超えてよみがえる投げる哲学者・今永昇太の言葉(5月14日)
  • 【野球】阪神「TORACO DAY」今年で11年目 進化の背景とは? タイガースを応援する女の子のためのお祭り(5月14日)
  • 【野球】阿部巨人 首位争い支える投手陣改革とは? 目標は四球1割減「ゾーン内」「3球勝負」推奨(5月17日)
  • 【野球】「セ・リーグで一番難しい」マツダスタジアムの内野守備 広島が堅実に守れているワケ(5月14日)
  • 【野球】ヤクルト今季初4連勝支えた増田が生み出したハカ旋風 出合いは横浜高校時代(5月12日)
  • 【野球】なぜ阪神は最大7点差を逆転されたのか 岡田監督「修正でけへんのやなあ」 楽勝ムードが一転、DeNAの一発攻勢にひれ伏した悪夢の展開(5月12日)
  • 【野球】なぜ阪神・岡田監督は7点差逆転負け翌日に打線を組み替えたのか マルチ安打の佐藤輝をスタメンから外す大胆采配 驚きのオーダーに隠された意図とは(5月13日)
  • 【野球】DeNA-阪神 大激戦の最中にスポーツの魅力が詰まったワンシーン 山崎が死球をぶつけた大山を気遣う 大山も紳士的対応(5月11日)
  • 今日みられてます

    • 1
    • 2
    • 3
    • 4
    • 5
    • 6

    注目トピックス

    カードローン、即日融資

    私でも審査が通る?人気のカードローンを厳選比較!収入証明不要、即日融資も⇒

    阪神タイガースプリント

    紙面に掲載された厳選写真をお近くのセブン-イレブン、ローソン、ファミリーマート、サークルKサンクスで!

    競馬G1プリント

    紙面に掲載されたG1のレースシーンをお近くのセブン-イレブン、ローソン、ファミリーマート、サークルKサンクスで!

    阪神 今日は何の日?

    タイガースが1面を飾った出来事が満載!

    今日は誰の誕生日?

    毎日更新!誕生日を迎えた有名人を紹介