【振付師・宮本賢二の解説】教科書のようなジャンプ “豪快で繊細”な羽生

 「平昌五輪・フィギュアスケート男子・SP」(16日、江陵アイスアリーナ)

 男子ショートプログラム(SP)で羽生結弦(ANA)が自身2番目の高得点となる111・68点をたたき出し、66年ぶりの連覇へ首位発進を決めた。15、16年世界王者のハビエル・フェルナンデス(スペイン)が107・58点で2位、昨季世界選手権2位の宇野昌磨(トヨタ自動車)は自己ベストに0・70点と迫る好演で3位。金博洋(中国)が103・32点で続き、4人が100点を超えるハイレベルなメダル争いとなった。

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 【振付師・宮本賢二のエンジョイ!!フィギュア】

 羽生選手にケガの影響はまったく感じなかった。最初のターンでカチッと止まり、美しい形で滑り出したところはさすがだ。

 出来栄え3点を得たトリプルアクセルは、教科書のようなジャンプだった。よいジャンプというのはプログラムにしっかりと取り込まれ、準備段階を見せずにさらっと跳ぶ。まさにそういうジャンプだった。彼のジャンプは高さがあり豪快な一方で、軸が細く回転が速いため繊細でもある。その繊細さがゆっくりとした曲調にも合い、ジャンプ自体が曲に溶け込んでいた。

 スピンやステップも同様だ。回転数やポジションの変化、足替えなど必須項目を次々とこなすスピンは、曲の流れをある程度無視せざるを得ない部分がある。しかし、羽生選手はただレベルを上げるためにこなしているだけでなく、音の始まりに足替えを合わせるなど曲にピタリと合わせられる。

 また、最後のステップの前には「今からやります!」と宣言するようにためをつくり、より観客を引きつけた。曲を自分の中でかみ砕いて表現できる希少な存在だ。

 宇野選手は緊張すると体が動きすぎると言っていたが、回りすぎたトリプルアクセルを「絶対降りるんだ」という気合で止めた。初五輪でよく自分をコントロールできていると思う。中学時代から振り付けを担当してきた田中選手は冒頭のジャンプで転倒し壁に激突した時に、気持ちを切らさず次へ向かっていったことを評価したい。

 上位5選手が全員ノーミスというハイレベルなSPだった。フリーはSPより長さが約1・5倍になる。羽生選手の体力面は問題ないと思うが、SPで3つだったジャンプは8つになるためペース配分は重要だ。4回転は2種類でもいいと思う。ただ、今までの彼は常に自分に勝つことを目指してきただけに、ループを加えて3種類にする可能性もあるだろう。フリー「SEIMEI」は2度目のシーズンで踊りこなしており、表現、スケーティングは心配ない。

 五輪王者であるということを自分自身が誰より理解し、重圧をすべて力に変えた羽生選手の強さには驚くしかない。強い気持ちを見せた宇野選手とともに、日本人ワンツーを狙ってほしい。

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