大谷翔平を真美子夫人とともに支えた愛犬「デコピン」の存在 「印象に残っている」8・29始球式 担当記者が振り返る
ドジャース・大谷翔平選手(30)を取材してきたデイリースポーツ大リーグ担当・小林信行記者が、心に残る出来事を思い返し、二刀流復活にかける今季を占う「大谷新伝説へ」。第4回は、大谷ファミリーの大切な一員である「デコピン」について。今ではドジャースファンからも愛され、始球式などにも登場するなど、愛犬の大活躍を振り返る。
会見場が笑いに包まれた。23年12月14日、ドジャースタジアムで開かれた大谷の入団会見。地元記者のユーモアあふれる質問が秀逸だった。
「MVPの発表以来、世界中の人々があなたの愛犬の名前を知りたがっています。さあ、ここで、どうかそのお名前を明かしていただけませんか?」
その1カ月前のMVP発表。2度目の栄冠を手にした大谷は、犬とともにリモート出演した。ハイタッチを交わすなど、その愛くるしい姿が大きな話題になった中、SNS上でオランダ産の希少種「コーケルンホンディエ」と判明。報道陣の間では、おそらく大谷の飼い犬だろうという不確かな状況下で、この日の会見を迎えたのだった。
「えーっ、『デコピン』って言うんですけど」
大谷が照れながら明かす。会見場にいた日本の報道陣がどっと沸いた。「なぜ笑ったの?デコピンって何?」不思議がる地元記者にその面白さを説明するのに苦労した。
デコピン人気はうなぎのぼり。球団の公式Xに大谷とともに球場入りする様子を収めた画像が投稿されると、瞬く間に拡散された。今ではインターネット百科事典「ウィキペディア」に掲載されるほどの存在となった。
クライマックスは24年8月29日のオリオールズ戦だろう。愛犬を抱えた大谷の姿を模したボブルヘッド人形が、先着4万人の入場者に配られる特別な日だった。
ド軍では自身の人形配布の試合には家族で始球式を行うことが恒例だ。大谷は5月16日の「人形デー」では、真美子夫人と話し合い、難病と闘う少年を球場に招待。試合前にはサプライズで対面を果たし、捕手役を務めた。「良い思い出になってくれればうれしい」。優しさあふれる粋な計らいを見せていた。
シーズン2度目の始球式。大谷がデコピンを抱っこしてフィールドに現れた。テレビの画面越しでも球場の興奮が伝わってくる。まさか…。マウンドに愛犬を残し、自身は本塁へ移動。ボールをくわえた愛犬が主人に向かって一直線に走る。場内は大盛り上がりだった。
「一番緊張したのはデコの始球式でした」
昨年11月、3度目のMVPを受賞した時の会見で「印象に残っている場面」を問われた大谷が、そう即答したほど大きな出来事だった。
実は、その“歴史的瞬間”を記者は球場でではなく、自宅のテレビで見ていた。5年ぶりに腎臓結石を発症。痛恨の極みだった。





