大谷翔平「感謝しかない」あふれ出る真美子夫人への思い 批判的な声とは無縁二人三脚で「最高」の結果に 担当記者が振り返る
ドジャース・大谷翔平選手(30)を取材してきたデイリースポーツ大リーグ担当・小林信行記者が、心に残る出来事を思い返し、二刀流復活にかける今季を占う「大谷新伝説へ」。第3回は、昨年2月に結婚を発表し、激動の1年を支えた真美子夫人について。ワールドシリーズ制覇後の会見で夫人について問い、そこであふれ出た大谷の思いなどを振り返る。
ドジャースがワールドチャンピオンになった日に絶対に聞こう。そう心に決めていた。
24年10月30日、ヤンキースタジアムの記者会見場。4勝1敗でヤンキースを撃破し、シャンパンファイトで喜びを爆発させた大谷が、全身アルコールまみれのまま、ひな壇に座った。挙手をしてマイクを手渡された記者は、結婚1年目で互いに助け合い、過酷なシーズンを乗り越えた真美子夫人への思いを問うた。
「もう本当に感謝しかないですね。長いシーズンですし、僕は慣れてますけど、彼女はそうではないので。これだけ長いシーズンを支えてもらったことに感謝していますし、来年以降も頑張っていきたいなと思います」
質問に入る前に「きょうは特別な日ということであえて聞きたい」と前置きしたのは、選手の本業は野球だと理解していることを知ってほしかったから。誠意ある返答がうれしかった。
昨シーズンを振り返れば、大谷には驚かされてばかりだった。
24年2月28日深夜、キャンプ地アリゾナから自身のインスタグラムを更新した。「本日は皆さまに結婚いたしました事をご報告させていただきます」。浮いた話とは無縁の青年が、まさかの結婚発表。文字通り「電撃」だった。
真美子夫人初お披露目の時も意表を突かれた。開幕戦を行う韓国へ出発する日に、インスタグラムで夫婦の画像を投稿した。仁川空港に先乗りし、選手を待ち受けていた記者が慌てふためいたのは言うまでもない。
今思い出してもほっこりするシーンがある。夏のドジャースタジアム。真美子夫人と愛犬デコピンに見送られてクラブハウスに向かう大谷を、偶然見かけた。幸せあふれる、極上の満面の笑みだった。
ライフスタイルにも変化が見えた。独身時代よりも球場入りの時間は遅くなり、帰宅時間が早くなった。元通訳によるスキャンダルを振り返った時には「隣に誰かいるかどうかはだいぶ違う。いてくれて良かった」と家族の存在の大きさを口にした。
成績を落としたり、けがで長期離脱したりすれば、結婚に批判的な声が上がっていた可能性もあった。しかし、それも記者の杞憂(きゆう)に終わった。「『最高』以外の言葉がない」。シャンパンにまみれながら大谷が発したひと言。今にして思うと、新しい命が誕生する喜びも含まれていたのかもしれない。