大谷翔平 史上最悪から始まった激動と栄光の2024年 元通訳の違法賭博 担当記者が振り返る

 ドジャース・大谷翔平
 米カリフォルニア州サンタアナの連邦地裁を出る水原一平被告(右)=6月4日(共同)
 エンゼルス戦の4回、空振り三振に倒れた大谷=3月26日、アナハイム(共同)
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 昨季は最大の目標だったワールドチャンピオンに輝き、3度目のMVPも受賞。プライベートでは生涯の伴侶を得て、第1子も誕生予定だ。唯一無二の存在、ドジャース・大谷翔平選手(30)を取材してきたデイリースポーツの大リーグ担当・小林信行記者が、心に残る出来事を思い返し、二刀流復活にかける今季を占う。第1回は開幕直後に巻き込まれたまさかの大スキャンダルを振り返る。

 「一平君…お疲れさまでした…」-。

 24年6月4日、カリフォルニア州サンタアナ連邦裁判所。本紙公式Xに投稿された、ドジャース・大谷の元通訳、水原被告の様子を伝える動画の最後は私の声で終わっている。

 メジャーを代表するスター選手の銀行口座から無断で約1700万ドル(約26億円)もの大金を引き出し、違法賭博で失う愚行。有罪答弁を終えた後、日米報道陣から謝罪や反省の言葉を求める質問を無視し続けて歩くその姿が、悲しかった。濁った目。公私で大谷を支え続けてきたと思われていた男の成れの果て。弁護士が用意した黒塗りのSUVに乗り込んだ被告を前にして、とっさに私の口から出たのは“別れの言葉”だった。

 事件が公になったのは24年3月21日未明。韓国で行われた開幕戦の直後だ。その数日前、SNS上では初めて披露された大谷夫妻のツーショットとともに水原夫妻の画像が話題になった。良い思い出になるはずだったのだが…。

 24年3月25日、ドジャースタジアムの記者会見場は足の踏み場もないほど報道陣でごった返していた。韓国で水原被告が解雇されて以来、無言を貫いてきた大谷が初めて口を開いた。

 報道陣には事前に質疑応答なしと伝えられた。会見場に、選手の関与を疑う声があったのは事実。しかし、大谷は正々堂々と自身の潔白を主張し「彼が僕の口座からお金を盗んで、なおかつ、僕の周りにもウソをついていたというのが結論」と言い切った。澄んだ目。すべてを如実に物語っていた。

 大谷は数日にわたり、試合前に警察などの事情聴取に応じた。「最初の方はいろいろあったので、ちょっと睡眠が足りてないなっていう日が続いていました」。過酷な日々。珍しく、風邪薬を携えていたのもこの頃だ。自己ワーストの開幕から40打席連続ノーアーチ。ド軍とスポーツ史上最大(当時)となる10年7億ドル(約1015億円)の契約を結んで臨んだシーズンは、野球人生最悪のスタートを切る形となった。

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