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【ボート】ボート界の熱血漢・熊谷直樹のスピンオフドラマ

10日の児島優勝戦後の熊谷直樹(右)と後輩の荻野裕介(左)
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 「ボートレース記者コラム 仕事 賭け事 独り言」

 7年ぶりに帰ってきた人気ドラマ・半沢直樹の続編が話題を集めている。8話の放送が延期となり、急きょ生放送となった6日も好視聴率をマーク。かくいう私も、仕事を終えてダッシュで帰宅し、テレビにくぎ付けになった一人。

 主演の堺雅人はもちろん、脇を固める個性あふれる俳優陣が素晴らしい。中でも香川照之のアドリブを交えたセリフは大人気。私は江口のりこ演じる女性大臣のマネをして楽しんでいる。

 こじつけのようだが、ボートレース担当の私は、毎シリーズが一話完結のドラマだと思っている。6日間開催の場合、四十数名の選手と一週間を過ごす。絶対的主役が存在する節、実力伯仲の節、途中で主役が入れ代わる節。色んなパターンがあるが、最後に勝つのは1人。そこに至る過程に毎回ドラマがある。

 9月4日に開幕した児島ボートは台風10号の影響で7日が中止順延。最終日は10日に延期された。シリーズ前半の3日目までは、半沢風な熱血漢で知られる熊谷直樹(55)=東京・56期・A1=が得点率トップ。つまり主役だったが、8日に再スタートした後半からはクールな中辻博訓(46)=福井・78期・A1=が6連勝。中辻が主役の座を奪い、優勝戦では熊谷率いる東京支部4人を後ろに従えVゴールを駆け抜けた。

 これがドラマの本筋だが、スピンオフも見応えがあった。それは、優勝戦2着の荻野裕介(40)=東京・87期・A2=と同3着の熊谷直樹の物語。これには一節間笑わせてもらった。熊谷は主要キャストの一人として、初日メインの12Rに出場。インタビューを行っていると、荻野が乱入し、2人でインタビューごっこを始めた。

 熊谷は一見するとこわもて。15歳年下の荻野が遠慮なくじゃれつき、それを熊谷が寛容に受け入れていることが意外だった。その後も、2人のやりとりが面白くて新聞記事のコラムに書いたのだが、それを読んだ荻野が「活字にしちゃダメだよ。僕が熊谷さんをなめていると思われる!!」と血相を変えて飛んできた。

 当の熊谷は「何でも好きに書いていいですよ。ただし、荻野君とは仲は良くない」と豪快に笑い飛ばした。私は熊谷の懐の深さに救われた。なぜなら、先輩に対して失礼だと感じさせる記事が掲載されたと、取材嫌いになった選手がいるからだ。

 シリーズに話を戻すと、先輩の熊谷は予選2位。整備、整備で苦戦した荻野は15位でギリギリ通過(18位までが準優勝戦に進出)。準優勝戦では10Rに登場した荻野が1着で優勝戦に勝ち上がり、2連単で3万円台、3連単で9万7千円台という破格の数字。好視聴率ならぬ、好配当を叩き出した。続く11Rの熊谷はド根性のスタートで準優を突破し優勝戦へ進出。こうして、2人は優勝戦で競演することとなった。

 優勝戦には2号艇・熊谷、3号艇・荻野、4号艇・石渡鉄兵、6号艇・伯母芳恒と4人の東京支部勢が進出。インタビューで熊谷にその話を振ると「一人余計なのがいますけどね。荻野ってヤツです」とニヤリ。そして「優勝戦は東京のワンツースリーフォーを狙う」とビシッと締めた。一方の荻野は何度も「ずっと必死のパッチ(関西圏で使われる必死の最上級の意)です」を繰り返し、優勝戦は果敢なまくりで東京勢では最高位の2着でゴールした。

 優勝戦後、足早にレース場を後にする選手が多い中、最後に出てきたのは熊谷だった。私は物語の完結編を記すべく、写真撮影を願い出た。「時間、ギリギリだよ」と荻野が心配する中、熊谷はリクエストに応じてくれた。

 活字だけで表現できなかった2人の関係性を伝えたい。2人はその意図を察していた。写真撮影後は急いでタクシーへ。すると、それまでふざけていた荻野の態度が一変した。今まで見たことのない真剣な目で熊谷を見つめ、「どうぞ」と手を差しだし後部座席の奥へ。その目は、熊谷直樹という男を尊敬してやまない目だった。あのラストシーンには震えた。

 紙面では文字数の制限があって伝えきれないので、今回はノーカット版をお届け。レーサー直樹は、バンカー直樹に負けない熱い男。それを取り巻く面々も個性派ぞろい。選手それぞれの個性を背景にボートレースを楽しんでいただけると幸いです。完。(関西ボート担当・野白由貴子)

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